ハンドドリップでは、
「細く注ぐ」
「ゆっくり注ぐ」
「何回かに分けて注ぐ」
といった方法が紹介されています。
注ぎ方によって味が変わる、と聞いたことがある人もいるでしょう。
では、お湯の注ぎ方を変えると、何が変わるのでしょうか。
実は「注ぎ方」という一つの言葉の中には、いくつもの条件が含まれています。
たとえば、
一度に注ぐお湯の量。
注ぐ速さ。
何回に分けるか。
どの位置に注ぐか。
どのくらいの高さから注ぐか。
次のお湯を注ぐまで、どのくらい待つか。
こうした違いによって、粉とお湯の接触の仕方が変わります。
ドリッパーの中にたまるお湯の量も変わります。
粉が動く程度や、お湯が通過する速さも変わることがあります。
その結果、抽出時間や成分の取り出され方も変化します。
つまり、
注ぎ方を変えることは、一つの条件だけを変えているとは限りません。
たとえば、ゆっくり注いだら抽出時間が長くなった。
このとき、出来上がったコーヒーが変わったとしても、
「ゆっくり注いだから、この味になった」
とだけ考えることはできません。
注ぐ速さを変えたことで、水位や粉の動き、抽出時間なども変わっている可能性があります。
反対に、同じ時間で抽出できたとしても、ドリッパーの中でお湯がどのように粉と接触したかまで同じとは限りません。
ここで、もう一つ考えたいのが「攪拌」です。
お湯を注ぐと、コーヒー粉は動きます。
注ぎ方によって、その動きの大きさも変わります。
粉とお湯の接触を促すことは抽出に影響しますが、強く動かせば必ずよくなる、というものでもありません。
粉の状態やドリッパーによっては、お湯の流れ方そのものが変わることもあります。
では、どんな注ぎ方が正しいのでしょうか。
一つの方法だけが正解というわけではありません。
大切なのは、
その注ぎ方によって、ドリッパーの中で何が変わったのかを見ることです。
注ぐ速さを変えた。
抽出時間はどう変わったか。
出来上がった量はどうだったか。
味や香りはどう変わったか。
そこまで見て初めて、その操作と結果を結びつけることができます。
レシピに書かれた注ぎ方を再現することは、比較を始めるためには便利です。
しかし、その形を守ること自体が目的ではありません。
なぜそのように注ぐのか。
変えたら何が変わるのか。
それが分かれば、使う豆や器具が変わったときにも調整できるようになります。
注ぎ方は作法ではなく、抽出を調整するための操作の一つです。