コーヒー豆をグラインダーで挽くと、「中挽き」「細挽き」と呼ばれる粉になります。
写真で見ると、同じくらいの大きさの粒が並んでいるようにも見えます。
では、中挽きに設定したグラインダーから出てくる粉は、全部同じ大きさなのでしょうか。
答えは、
同じ大きさにはなりません。
実際のコーヒー粉には、大きな粒もあれば小さな粒もあります。
そして、この「ばらつき」も挽いたコーヒーの状態を知るための情報になります。
グラインダーは、豆を同じ寸法に切っているわけではない
まず、グラインダーの中で何が起きているかを考えてみます。
コーヒー豆は、刃の間を通過するときに、決められた寸法へ一回できれいに切断されているわけではありません。
豆に力が加わり、割れたり砕かれたりしながら小さくなっていきます。
そのため、出来上がる破片の大きさも一つにはなりません。
比較的大きな粒。
中心となる大きさの粒。
細かな粒。
さらに細かな粉。
いろいろな大きさが混ざります。
つまり「中挽き」と呼んでいるものも、本当は、
一つの大きさの粉ではなく、さまざまな大きさの粒が集まった状態
です。
粒の大きさを並べてみる
挽いた粉を、大きさごとに分けられたとします。
たとえば、
小さい ← ・・・・・・・・・・・・ → 大きい
という順番に並べます。
どの大きさの粒がどのくらいあるのかを見れば、粉の状態がもう少し詳しく分かります。
ある大きさの粒が多い。
その周辺にも粒がある。
かなり細かな粒も少しある。
大きな粒も残っている。
このような、
粒の大きさと、その量の広がり
を粒度分布と呼びます。
「平均500μm」だけでは分からない
仮に二つの粉を測って、どちらも代表となる粒径が500μmだったとします。
数字だけを見ると、同じ粉に見えます。
しかし実際には、
Aは500μm付近に粒が多く集まっている。
Bは細かな粒から大きな粒まで広く分布している。
ということがあります。
つまり、
中心を表す数字が同じでも、分布全体が同じとは限りません。
これは平均値について考えると分かりやすいでしょう。
平均が同じ二つの集団でも、その中身まで同じとは限りません。
コーヒー粉も同じです。
一つの代表値は便利ですが、それだけでは見えなくなる情報があります。
中心だけでなく、両側にも違いがある
さらに分布を見るときには、中心からどのくらい離れているかだけでなく、
細かい側がどうなっているか。
粗い側がどうなっているか。
も見ることができます。
二つのグラインダーで中心付近の粒径が似ていても、
一方は細かい側へ広く分布している。
もう一方は大きい側へ広く分布している。
ということもあります。
だから、
「中心が同じ」
「平均が同じ」
だけでは、
細かな粒がどのくらいあるのか。
大きな粒がどのくらいあるのか。
どの範囲に粒が集中しているのか。
までは分かりません。
分布は、中心だけでなく形を持っています。
微粉とは何だろう
コーヒーでは、とても細かな粒を「微粉」と呼ぶことがあります。
では、
何μm以下なら微粉なのでしょう。
ここでも、絶対的な境界を一つ決められるとは限りません。
何を目的に見ているのか。
どんな測定方法なのか。
どの範囲を微粉として扱うのか。
によって、区切り方が変わることがあります。
つまり「微粉」も、
自然界に最初から境界線が引かれているものではなく、
粒度分布の細かい側を扱うために使っている言葉
と考えると分かりやすくなります。
大きな粒にも名前を付けられる
細かい側ばかり注目されがちですが、当然、大きい側にも粒があります。
場合によっては「粗粒」などとして扱われます。
ここでも同じです。
どこからを大きな粒とするのか。
何と比較して大きいのか。
目的によって境界は変わります。
微粉が何%ある。
粗い粒が何%ある。
という数字を見ると、とても客観的に見えます。
でも、その前には必ず、
どこからどこまでを、そのカテゴリーとして数えるのか
という基準があります。
数字を読むには、その基準も必要です。
ふるいにかければ、粒の大きさが分かる?
粉の大きさを調べる方法の一つに、ふるいがあります。
目の大きさが違う複数のふるいを重ね、粉を分けます。
大きな網目は通過した。
次の網目では残った。
そうすれば、その粒がどの範囲に入るかを分類できます。
これは粒度分布を調べる一つの方法です。
ただし、ここでも少し注意が必要です。
コーヒー粉は球ではありません。
細長かったり、平たかったり、角張っていたりします。
そのため、ふるいで得られる情報は、
単純に「この粒の直径は○○μmだった」という話とは少し違います。
どの方法で測った数字なのか
まで含めて見る必要があります。
別の方法で測ったら?
粒度を調べる方法は、ふるいだけではありません。
画像から粒の大きさを調べる方法もあります。
光などを利用して粒子の大きさの分布を推定する方法もあります。
しかし測定方法が違えば、
「粒の大きさ」をどう捉えているかも違います。
複雑な形をした粒子を、一つの数字で表すためには、どこかで「大きさとは何か」を決めなければならないからです。
そのため、
測定結果の数字だけを取り出して、別の測定方法の数字とそのまま比較できるとは限りません。
これはコーヒーに限った話ではありません。
測定値には、測り方があります。
粒がそろっている方がいい?
ここまで読むと、
「それなら、できるだけ全部同じ大きさにすればいい」
と思うかもしれません。
確かに粒度分布は、抽出に関係します。
細かな粒と大きな粒では、水との接触や成分が移動する条件が違います。
だから粒度分布が変われば、抽出結果も変わる可能性があります。
ただ、
粒がそろっている=必ずおいしい
とまでは言えません。
どんな抽出方法なのか。
どんなコーヒーなのか。
どんな味を目指しているのか。
粉の層を水がどう通るのか。
ほかの条件も関係します。
粒度分布は、品質を一つの数字で決める点数ではありません。
抽出を理解するための情報の一つです。
そろっているかどうかにも、程度がある
「粒がそろっている」という言葉も少し曖昧です。
どの範囲に何%入っていれば、そろっているのか。
どのくらい細かな粒があれば、ばらついているのか。
ここにも基準が必要です。
ある用途では十分そろっている。
もっと厳密な比較では、まだ広すぎる。
ということもあります。
だから、
そろっている・そろっていないも、何を見るための評価なのか
を考えた方が分かりやすくなります。
粒度分布を見ると、目盛りの意味も変わってくる
前の記事では、グラインダーの目盛りについて考えました。
目盛り5。
目盛り6。
これはグラインダーを調整するためには便利です。
でも粒度分布を見ると、
「5だから、この大きさ」
とは単純に言えない理由が見えてきます。
目盛りを変える。
粉砕条件が変わる。
粒度分布が変わる。
その結果、抽出も変わる。
つまり、
目盛りは操作する側の数字で、粒度分布はその結果として出来上がった粉を見る情報
です。
ここを分けると、グラインダーの調整が少し整理しやすくなります。
どこまで測ればいい?
では毎朝、コーヒーを淹れる前に粒度分布を測定するべきでしょうか。
さすがに朝食が終わる頃には昼になります。
家庭で普通にコーヒーを淹れるなら、そこまで必要ないでしょう。
中挽きくらいから始める。
飲んでみる。
必要なら少し細かくする。
あるいは粗くする。
それで目的を達成できるなら十分です。
一方で、
グラインダーの違いを比較したい。
抽出結果が変わった原因を調べたい。
同じ条件をできるだけ再現したい。
となれば、粒度分布を見る意味が出てきます。
ここでも、
詳しく測れるから測るのではなく、知りたいことが増えたから見る項目を増やす。
順番はこちらです。
コーヒーの粉は、全部同じ大きさに挽ける?
一般的なグラインダーで豆を挽けば、出来上がる粉にはさまざまな大きさの粒が含まれます。
だから挽き目を見るときには、
「何μmだったか」
という一つの数字だけでなく、
どんな大きさの粒が、どのように分布しているか
という見方があります。
代表値が同じでも、分布は違うことがあります。
細かい側も違う。
大きい側も違う。
そして、その違いが抽出にも関係してきます。