微粉は、ない方がいい?

コーヒー豆を挽くと、さまざまな大きさの粒ができます。

その中でも、とても細かな粒を「微粉」と呼ぶことがあります。

コーヒーの淹れ方を調べていると、

「微粉は雑味の原因」

「微粉を取り除くと、すっきりした味になる」

「性能のいいグラインダーは微粉が少ない」

といった説明を見かけます。

では、

微粉は、ない方がいいのでしょうか。

そう簡単には決められません。

そもそも「微粉」が何を指しているのか。

微粉が抽出の中で何をしているのか。

そして、何を「良い」とするのか。

この三つを分けて考える必要があります。

そもそも、どこからが微粉?

前の記事で見たように、挽いたコーヒーには粒度分布があります。

大きな粒から小さな粒まで、連続して存在しています。

では、

100μmなら普通の粉。

99μmになった瞬間に微粉。

というような境界が、コーヒー粉そのものに存在するでしょうか。

そうではありません。

実際には、

ある目的のために、細かい側の粒を「微粉」と呼んでいます。

どの大きさ以下を微粉として扱うのかは、測定方法や目的によって変わることがあります。

つまり、

「微粉が何%ある」

という数字を見るときにも、

何を微粉として数えたのか

を確認しなければ、本当は比較できません。

微粉は、なぜできる?

グラインダーは、豆を同じ寸法に切りそろえているわけではありません。

豆に力を加え、割ったり砕いたりしながら小さくしています。

その過程で、大きな破片もできれば、小さな破片もできます。

その中の細かな側にあるものを、私たちは微粉と呼んでいます。

つまり微粉は、

粉砕するときに生まれる粒度分布の一部

です。

何か別の異物が混ざっているわけではありません。

同じコーヒー豆から生まれた粉です。

微粉は、抽出されやすい

細かな粒は、大きな粒に比べて表面積が大きく、内部までの距離も短くなります。

そのため一般には、成分が水へ移動しやすい条件になります。

同じ時間、水と接触させても、

大きな粒と細かな粒では、抽出の進み方が同じとは限りません。

そこで、

「微粉は抽出されすぎる」

という説明が出てきます。

ただし、ここで少し注意が必要です。

抽出されやすいことと、必ず嫌な味になることは同じではありません。

ここを一つにつなげてしまうと、

微粉
↓
過抽出
↓
苦い・渋い・雑味
↓
悪い

という、とても分かりやすい図ができます。

分かりやすいのですが、現実はもう少し面倒です。

「過抽出だからまずい」は、それほど単純ではない

コーヒーでは「抽出しすぎると雑味が出る」と説明されることがあります。

しかし実際の一杯では、

すべての粒から同じ割合で成分が取り出されているわけではありません。

細かな粒。

大きな粒。

水がよく通った場所。

あまり通らなかった場所。

それぞれ抽出の状態が違う可能性があります。

最終的に飲んでいるのは、それらが混ざった液体です。

だから、

「微粉だけが抽出されすぎたから、この味になった」

と、一つの原因だけで説明できるとは限りません。

苦味や渋味の感じ方にも、豆そのものや焙煎、濃度、温度など、さまざまな条件が関係します。

味の結果から、一つの原因をすぐに決めない。

これは微粉について考えるときにも大切です。

微粉は、水の流れにも関係する

特にドリップでは、微粉にはもう一つ重要な面があります。

粉の層を湯が通るとき、細かな粒は粒と粒の間に入り込みます。

また、抽出中に水の流れによって移動することもあります。

その結果、粉の層の水の通りやすさが変わることがあります。

たとえば、

同じ豆量。

同じ湯量。

同じような注ぎ方。

でも、粉の状態が違えば、落ちる時間が変わることがあります。

つまり微粉は、

成分が取り出されやすい小さな粒であるだけでなく、水がどう流れるかにも関係する

わけです。

微粉を取り除くと、何が変わる?

では、挽いた粉をふるいにかけて、細かな粒を取り除いたとします。

微粉が減ります。

それだけを見ると、一つの条件だけを変えたように思えます。

しかし実際には、

粒度分布が変わります。

粉全体の重量も減ります。

粉の層の状態も変わります。

水の流れ方も変わる可能性があります。

同じレシピで淹れれば、抽出時間まで変わるかもしれません。

つまり、

「微粉を取った」という一つの操作によって、抽出では複数の条件が変わる可能性があります。

味が変わったとしても、それを単純に、

「雑味の原因だった微粉を取り除いたから」

だけで説明するのは早すぎます。

微粉を取って、すっきりした

実際に微粉を取り除いて淹れると、

「すっきりした」

「クリアになった」

と感じることはあります。

その感覚を否定する必要はありません。

重要なのは、その次です。

なぜそうなったのか。

細かな粒から取り出されていた成分が減ったのか。

水の流れ方が変わったのか。

抽出時間が変わったのか。

粉量が変わった影響なのか。

あるいは、それらが組み合わさったのか。

感じた違いと、その原因の説明は分けて考えることができます。

「違った」は観察です。

「微粉が雑味を出した」は原因についての仮説です。

同じものではありません。

では、微粉は少ないほど優秀?

グラインダーを比較するときにも、

「微粉が少ない」

ことが性能の高さとして語られる場合があります。

でも、ここにも「何のために」という話があります。

どんな抽出方法に使うのか。

どんな粒度分布を狙っているのか。

どんな流れを作りたいのか。

どんな味を目指しているのか。

それによって、望ましい粉の状態は変わります。

微粉量だけを取り出して、

少ないほど高性能

という一本の物差しにすることはできません。

グラインダーの性能には、粒度分布だけでなく、調整のしやすさ、再現性、粉の残留、処理能力など、別の要素もあります。

エスプレッソでも微粉はある

微粉の話は、ドリップだけではありません。

エスプレッソ用に細かく挽いた粉にも、当然、粒度分布があります。

しかもエスプレッソでは、粉の層そのものが水の流れに大きな抵抗を与えます。

細かな粒がどのように存在するかは、水の流れや抽出にも関係します。

だから、

「微粉を全部なくせば理想的なエスプレッソになる」

という話にもなりません。

むしろ抽出方法によって、

粒度分布のどの部分が、どんな役割を持つのか

を考える必要があります。

フィルターを通った微粉は、また別の話

「カップの底に微粉がある」

という話もあります。

これは、グラインダーから出てきた微粉の話と少し分けた方がいいでしょう。

抽出に使った粉の中に細かな粒が存在することと、

その粒がフィルターを通過して飲料の中へ入ることは、

別の現象です。

金属フィルター。

布。

ペーパーフィルター。

などでは、通過する粒子の状態も違います。

カップの中に微粒子が入れば、口当たりなどにも影響する可能性があります。

つまり「微粉の影響」と言っても、

抽出中に粉の層に存在する影響

と、

抽出液へ粒子として入った影響

は分けて考えられます。

「微粉がある」と「微粉が多すぎる」も違う

ここも大事です。

微粉が存在する。

微粉が多い。

微粉が多すぎる。

これは同じ話ではありません。

「多すぎる」と言った瞬間に、

何かの目的に対して、多すぎる

という評価が入ります。

抽出時間が長くなりすぎる。

狙った味にならない。

再現しにくい。

カップに粒子が入りすぎる。

そうした具体的な問題があるなら、

「この条件では微粉が多すぎる」

と言えます。

反対に問題が起きていないなら、微粉が存在することだけを理由に取り除く必要があるとは限りません。

まず、何が起きているかを見る

たとえばドリップが思ったより遅かったとします。

そこで、

「微粉が多いからだ」

と考える。

これは仮説の一つです。

でも、

挽き目全体が細かかった。

豆量が違った。

注ぎ方が違った。

粉の層の状態が違った。

フィルターや器具が違った。

コーヒー自体が変わった。

ほかにも可能性があります。

そこで微粉だけを原因として決めてしまうのではなく、

まず何が変わったのかを見る。

必要なら微粉量も見る。

分からないことが出てきたから、見る項目を増やす。

以前考えた「基準の解像度」と同じ話です。

微粉は、ない方がいい?

微粉は、粉砕によって生まれる粒度分布の一部です。

細かなため、成分が水へ移動する条件は大きな粒とは違います。

ドリップでは、水の流れにも影響することがあります。

抽出液へ通過すれば、口当たりにも関係する可能性があります。

だから、微粉は抽出に影響します。

しかし、

影響することと、悪いことは同じではありません。

微粉がある。

抽出が変わる。

味が変わる。

そこまでは観察できます。

その結果が自分たちの目的に対して好ましいのか、好ましくないのか。

そこで初めて評価が入ります。

だから、

「微粉は悪いから取り除く」ではなく、「微粉があることで何が変わっているのかを見る」。

その方が、次の調整につながります。