コーヒーの焙煎では、温度を見ながら進めます。
「180℃で投入した」
「195℃で1ハゼが始まった」
「210℃で焙煎を終えた」
といった記録を見ることもあります。
では、この温度は何の温度なのでしょうか。
焙煎機には、温度を測るためのセンサーが取り付けられています。
豆の近くに設置されたセンサーの値は、一般に「豆温」やBT(Bean Temperature)などと呼ばれています。
ただし、ここで少し注意が必要です。
表示されている温度は、一粒一粒のコーヒー豆の内部温度を直接測ったものではありません。
センサーが置かれている場所には、多くの豆があります。
その間には空気も流れています。
センサー自身にも熱が伝わっています。
つまり、表示される温度は、センサーの位置や周囲の状態から得られた測定値です。
さらに、温度センサーには大きさや形、取り付け位置などの違いがあります。
同じ焙煎機でも、センサーの仕様や位置が違えば、表示される温度が同じになるとは限りません。
焙煎する豆の量によっても、センサーが受ける影響は変わります。
そのため、
「別の焙煎機で195℃だったから、自分の焙煎機でも195℃にすれば同じ」
とは考えられません。
同じ焙煎機でも、温度という数字だけですべてが分かるわけではありません。
温度は、時間と一緒に見ることで、さらに多くの情報を持つようになります。
たとえば、
180℃から190℃まで1分で上がったのか。
3分かけて上がったのか。
到達した温度が同じでも、そこまでの過程は違います。
さらに、豆の色や香り、1ハゼなどの変化と温度を一緒に記録すると、
「この焙煎機では、この表示温度のときに豆がこう変化した」
という関係が見えてきます。
ここが重要です。
温度計の数字そのものが、焙煎の答えなのではありません。
表示された温度と、実際に豆に起きた変化を結びつけて見るために温度を使います。
そうして記録を重ねると、温度は単なる数字ではなく、その焙煎機で起きていることを判断するための手がかりになっていきます。