コーヒーの焙煎では、1ハゼが始まってから焙煎を終えるまでの時間を「開発時間」や「デベロップメントタイム」と呼ぶことがあります。
たとえば、1ハゼが始まってから2分後にドロップした場合、その2分間が開発時間です。
この時間は、焙煎を記録するときによく使われます。
では、開発時間が同じなら、同じようなコーヒーになるのでしょうか。
そうとは限りません。
たとえば、どちらも1ハゼから2分でドロップしたとしても、
1ハゼまでにどのように熱を与えてきたのか。
1ハゼに入ったときの温度上昇の速さはどうだったのか。
その後、どのように温度が上昇したのか。
最終的にどこまで焙煎を進めたのか。
こうした条件が違えば、同じ「2分」という開発時間でも焙煎の内容は違います。
開発時間と一緒に使われる数字に「DTR」があります。
Development Time Ratioの略で、焙煎時間全体に対して、開発時間がどのくらいの割合を占めているかを表します。
たとえば、焙煎時間が10分で、1ハゼからドロップまでが2分なら、DTRは20%です。
割合にすることで、焙煎時間の違うプロファイルを比較するときの一つの手がかりになります。
ただし、
DTRが同じだから、同じ焙煎になるわけではありません。
まして、「○%ならおいしい」という数字でもありません。
DTRだけでは、1ハゼまでに豆がどのような熱を受けてきたのかは分からないからです。
もう一つ注意したいのは、「開発」という言葉です。
この名前だけを見ると、1ハゼより前は準備で、1ハゼから味や香りが作られ始めるように感じるかもしれません。
しかし、コーヒー豆の変化は焙煎の最初から続いています。
水分が移動し、色が変わり、香りが変化し、さまざまな反応が重なりながら1ハゼへ進みます。
1ハゼを境に、それまでの変化がなかったことになるわけではありません。
開発時間という区分は、連続している焙煎を記録し、比較しやすくするためのものです。
そのため、開発時間を見るときにも、
「何分だったか」だけではなく、「そこまでどう進み、そこからどう進んだか」
を一緒に見る必要があります。
そして最後に確認するのは、出来上がったコーヒーです。
目指していた味や香りになったのか。
そうでなければ、どこを変えてみるのか。
開発時間やDTRは、その違いを考えるための記録になります。
開発時間は、守るべき正解の数字ではなく、焙煎を観察し、比較するための一つの尺度です