コーヒーの淹れ方には、
「3分で抽出する」
「4分待つ」
といった時間が書かれていることがあります。
では、抽出時間が長いほど、コーヒーは濃くなるのでしょうか。
まず、抽出時間とは何かを考えてみます。
コーヒーの粉がお湯と接触すると、粉に含まれている成分がお湯へ移っていきます。
接触する時間が長くなれば、一般に、より多くの成分が取り出される方向に進みます。
そのため、ほかの条件が同じなら、抽出時間を変えることで出来上がるコーヒーも変わります。
ただし、ここでも単純に、
長い=濃い
短い=薄い
と考えるだけでは十分ではありません。
前の記事で触れたように、「濃度」と「抽出率」は別のものだからです。
出来上がった液体がどのくらい濃いのか。
コーヒー粉からどのくらいの成分を取り出したのか。
この二つは関係していますが、同じ意味ではありません。
さらに、抽出方法によって「時間」の意味も少し変わります。
たとえば、フレンチプレスのように粉とお湯を一定時間接触させる方法では、時間そのものを比較的直接設定できます。
一方、ハンドドリップでは少し事情が違います。
お湯を注ぐ量や速さ。
挽き目。
コーヒー粉の量。
ドリッパーやフィルター。
粉の状態。
こうした条件によって、お湯が落ちる速さが変わります。
つまり、ドリップでは抽出時間が、
自分で決める条件であると同時に、ほかの条件によって生まれる結果
でもあります。
たとえば、挽き目を細かくしたら、抽出時間が長くなった。
この場合、変わったのは時間だけではありません。
粒の大きさが変わり、お湯との接触の仕方が変わり、さらにお湯の流れ方も変わっています。
そこで出来上がった味が変わったとしても、
「時間が長くなったから、この味になった」
と時間だけを原因にすることはできません。
これは抽出を考えるうえで重要なところです。
コーヒーの条件は、それぞれが完全に独立しているわけではありません。
一つを変えると、別の条件まで動くことがあります。
だから比較するときには、
何を変えたのか。
その結果、ほかに何が変わったのか。
を一緒に見る必要があります。
抽出時間も「何分なら正しい」という数字ではありません。
同じ条件で淹れたとき、前回より長かった。
そのとき味はどう変わったのか。
なぜ時間が変わったのか。
そうやって記録と結果を結びつけていくと、時間という数字に意味が生まれます。
時間は、レシピを守れたかどうかを判定するだけの数字ではなく、抽出中に何が起きたのかを考えるための手がかりです。