コーヒーを淹れて飲んでみる。
少し違う。
そこで、
「挽き目を変えてみよう」
となることがあります。
もう少し細かくする。
もう少し粗くする。
グラインダーの調整は簡単です。
でも、その前に一つ考えてみます。
何を見て、挽き目を変えようと思ったのでしょう。
味でしょうか。
抽出時間でしょうか。
湯の落ち方でしょうか。
濃度でしょうか。
いつもの目盛りと違ったからでしょうか。
挽き目を変えること自体より、
何を変えるために挽き目を動かすのか
を考える方が、調整は分かりやすくなります。
「何となく違う」から始まってもいい
最初から原因が分かる必要はありません。
昨日より酸味を強く感じる。
苦味が残る。
薄く感じる。
重く感じる。
香りの印象が違う。
抽出がいつもより速い。
こうした「いつもと違う」が出発点でも十分です。
大切なのは、
「違うから細かくする」
とすぐに操作へ進む前に、
何が違ったのか
を一度見ることです。
まず、観察と判断を分ける
たとえば、
「抽出が速すぎた」
と考えたとします。
でも、
2分10秒で終わった。
というのは観察できます。
それに対して、
「速すぎる」
には判断が入っています。
いつもの基準が2分40秒だから速い。
狙った味にならなかったから速すぎる。
レシピに3分と書いてあるから速すぎる。
同じ「速すぎる」でも意味が違います。
だからまず、
何が起きたか。
次に、
それをどう評価したか。
を分けてみます。
抽出時間だけを見ればいい?
ドリップでは、挽き目を細かくすると湯の流れが遅くなる方向へ働くことがあります。
だから抽出時間は、挽き目を調整するときの分かりやすい情報です。
昨日は2分40秒。
今日は2分10秒。
何かが変わっています。
でも、
「2分10秒だから失敗」
とは限りません。
飲んでみて、狙っていた味になっているなら、その時間でも問題がない場合があります。
反対に、時間だけはいつも通りなのに、味が大きく違うこともあります。
抽出時間は結果を見るための一つの情報であって、それ自体が味の合否ではありません。
味を見る
最終的に飲むコーヒーなら、味は重要な情報です。
ただ、
「おいしい」
「まずい」
だけだと、次に何を変えればいいか分かりにくくなります。
もう少し分けてみます。
酸味をどう感じたか。
甘さはどうだったか。
苦味はどうだったか。
香りはどうだったか。
口当たりはどうだったか。
後味はどうだったか。
強すぎるものはあったか。
足りないと感じたものはあったか。
こうすると、
「おいしくなかった」
よりも、次の調整につながる情報が増えます。
でも、味から挽き目を直接決めない
ここで注意したいことがあります。
たとえば、
「酸っぱいから細かくする」
という調整方法があります。
実際に細かくすることで、好ましい方向へ変わることはあります。
ただし、
酸味を感じた=挽き目が粗い
とは限りません。
そのコーヒー自体が持つ酸味かもしれません。
焙煎による違いかもしれません。
湯温や湯量など、別の条件が関係しているかもしれません。
そもそも「酸っぱい」と感じているものが何なのかも確認できます。
味から原因を一つに決めてしまうのではなく、
味を手掛かりに、原因について仮説を立てる。
その方が調整しやすくなります。
湯の流れを見る
ドリップなら、湯の流れも情報になります。
いつもより速く落ちる。
途中から急に遅くなる。
最後だけ長くかかる。
一部から流れているように見える。
こうした違いがあれば、粉の層で何かが変わっている可能性があります。
挽き目全体。
粒度分布。
微粉。
粉の配置。
注ぎ方。
攪拌。
いくつもの要素が関係します。
だから、
「遅い=細かすぎる」
と必ず決める必要はありません。
まず、
どんな遅さなのか
を見ることができます。
粉そのものを見る
必要なら、抽出する前の粉も見ます。
いつもより細かく見える。
微粉が多そうに見える。
粉がまとまっている。
静電気が強い。
同じ目盛りなのに状態が違って見える。
これも情報です。
もっと詳しく調べる必要があれば、粒度分布を測ることもできます。
ただし、毎回そこまで測る必要はありません。
まず見た目で十分なら、そこで止めていい。
分からないときだけ、見る項目を増やす。
必要なところまで解像度を上げる。
これまで何度か出てきた考え方です。
濃度を測ることもできる
さらに詳しく見るなら、TDSなどを測る方法があります。
感覚だけでなく、抽出液の濃度という情報を追加できます。
昨日より薄く感じた。
実際に濃度も低かった。
ということもあれば、
薄く感じたけれど、濃度はほとんど変わっていなかった。
ということもあります。
後者なら、
「薄く感じた=溶けているものが少ない」
という最初の考えを見直すきっかけになります。
測定値は、味の代わりではありません。
感じたことを別の角度から確かめる情報
として使えます。
一度に全部変えない
味が気に入らなかった。
そこで、
挽き目を細かくする。
湯温を上げる。
豆を増やす。
注ぎ方も変える。
抽出時間も変える。
これでおいしくなった。
問題は、
何が効いたのか分からない
ことです。
飲むだけなら、それでも構いません。
おいしく飲めれば目的達成です。
でも、
「なぜ変わったのか知りたい」
「次も再現したい」
なら、変更する項目を絞った方が分かりやすくなります。
まず挽き目を変える。
結果を見る。
それでも足りなければ次を考える。
こうすると、変更と結果の関係を追いやすくなります。
ただし、一項目だけ変えたつもりでも
ここまでの記事で見てきたように、少し厄介なところがあります。
挽き目だけを変えた。
操作としては一項目です。
でも細かくした結果、
粒度分布が変わる。
水の流れが変わる。
抽出時間が変わる。
濃度が変わる。
ということがあります。
つまり、
操作した項目が一つでも、結果として変化する項目は一つとは限りません。
「一つずつ変える」は有効ですが、
「だから他の条件は何も変わっていない」
という意味ではありません。
基準を作る
調整するときには、戻れる場所があると便利です。
たとえば、
豆15g。
湯240g。
湯温90℃。
グラインダー5。
一定の注ぎ方。
を、自分の基準にする。
そこから一目盛り細かくしてみる。
結果を見る。
良ければ、その方向をさらに試す。
違えば戻す。
基準があることで、
どこから何を変えたのか
が分かります。
正しいレシピだから基準にするのではありません。
比較するための出発点として使います。
豆が変われば、基準も変わることがある
一度決めた挽き目を、すべてのコーヒーに使う必要もありません。
コーヒーが変われば、
豆の状態。
焙煎度。
粉砕されたときの状態。
抽出中の挙動。
味。
も変わることがあります。
同じ豆でも、焙煎後の経過によって抽出時の状態が変わることがあります。
だから、
「このドリッパーでは必ず5」
ではなく、
5を出発点にして、そのコーヒーに合わせて調整する
という使い方ができます。
基準から外れたら、戻す?
店では特に、
「この豆は5番」
「抽出時間は2分30秒から3分」
といった基準を作ることがあります。
再現するためには役立ちます。
でも、ある日5番で淹れたら、狙った結果にならなかった。
ここで、
「基準は5だから5に戻さなければ」
となると、基準そのものが目的になってしまいます。
まず、
なぜ結果が変わったのかを見る。
必要なら調整する。
そして、その状態が続くなら基準そのものを見直す。
以前考えた、
基準を決める
→ 比べる
→ 再現する
→ 判断する
→ 結果を見る
→ 必要なら基準を更新する
が、そのまま使えます。
「正しい挽き目」を探さない
コーヒーには、
「この豆の正しい挽き目は何番ですか?」
という問いがあります。
もちろん、最初の目安は作れます。
でも一つの豆に、自然法則として一つだけ正しい挽き目が埋め込まれているわけではありません。
使う器具。
豆量。
湯量。
湯温。
抽出方法。
狙う味。
によって、選ぶ挽き目は変わります。
だから探したいのは、
正しい挽き目ではなく、今の目的に合う挽き目
です。
挽き目を変えるとき、何を見ればいい?
まず、
何が起きたかを見る。
抽出時間。
湯の流れ。
粉の状態。
濃度。
そして味。
次に、
何を変えたいのかを決める。
もう少し抽出を進めたい。
流れを変えたい。
濃度を変えたい。
味のバランスを変えたい。
そのための方法の一つとして、挽き目を使います。
そして変えたら、
結果を見る。
期待した方向へ変わったのか。
別のものまで変わったのか。
変わらなかったのか。
そこから、また次を考えます。
挽き目調整は、
「酸っぱければ細かく、苦ければ粗く」
という答えを覚えることではありません。
観察する
→ 仮説を立てる
→ 挽き目を変える
→ 結果を見る
→ 必要ならまた調整する
という繰り返しです。
グラインダーの目盛りは、そのための道具です。
数字に従うためではなく、
変化を作り、その結果を確かめるために使う。
ここまで来ると、「挽き目」は単なるレシピの一項目ではなくなります。
コーヒーをどう調整するか、その考え方そのものが見えてきます。