コーヒー豆の商品名を見ていると、
「エチオピア G1」
「ケニア AA」
「グアテマラ SHB」
「コロンビア Supremo」
といった表示を見かけることがあります。
G1やAAと書いてあると、なんとなく「品質の高いコーヒー」という印象を受けるかもしれません。
では、ケニアAAとエチオピアG1では、どちらの方が上なのでしょうか。
実は、この二つをそのまま比べることはできません。
なぜなら、コーヒー豆の等級は世界共通の一つの基準で決められているわけではないからです。
国や地域によって、何を見て分類するのかが違います。
そもそも「等級」は何を見ている?
コーヒーの生豆には、さまざまな違いがあります。
豆の大きさ。
欠点豆の数。
栽培された標高。
生豆の状態。
そして、実際に飲んだときの味や香り。
こうした違いのうち、何を基準にして分類するのかは、国によって異なります。
豆の大きさを中心に分ける国もあれば、欠点豆の数を重視する国もあります。
標高を使って分類する地域もあります。
複数の条件を組み合わせて表示する場合もあります。
つまり、「等級」という同じ言葉を使っていても、実際に測っているものまで同じとは限らないのです。
いくつか代表的な例を見てみましょう。
ケニアの「AA」は、主に豆の大きさ
ケニアのコーヒーでは、
AA
AB
C
PB
などの表示を見かけます。
この分類で大きな基準になっているのが、豆の大きさです。
生豆を穴の大きさが異なる「スクリーン」と呼ばれるふるいに通して分類します。
AAは比較的大きな豆。
ABはそれより小さな豆。
PBは「ピーベリー」と呼ばれる、通常とは形の異なる丸い豆です。
ここで注意したいのは、
AAという表示そのものが、カッピングで最高得点を取ったという意味ではない
ことです。
AAは、まず豆の大きさなどによる分類です。
もちろん、大きさや密度などが生育条件や焙煎に関係することはあります。
しかし、
「大きい豆だから必ずおいしい」
という単純な話ではありません。
エチオピアの「G1」は、同じAAとは違う
エチオピアでは、
Grade 1
Grade 2
などの表記をよく見かけます。
日本では「G1」「G2」と書かれていることもあります。
こちらでは、生豆に含まれる欠点などの状態やカップの評価が分類に関係します。
つまり、ケニアのAAとは見ているものが違います。
ケニアAAとエチオピアG1を並べて、
「AAとG1なら、どちらが上?」
と考えても、そもそもの物差しが違うので単純には比較できません。
数字やアルファベットだけを見ると順位のように感じますが、別々の基準で分類されたものなのです。
中米では「標高」が出てくる
グアテマラなど中米のコーヒーでは、
SHB
という表示を見ることがあります。
SHBは「Strictly Hard Bean」の略です。
こうした分類では、コーヒーが栽培された標高が重要な基準になります。
一般に標高が高くなると気温が低くなり、コーヒーチェリーが成熟する速度などにも影響します。
そのような生育条件と豆の性質との関係から、標高を使った分類が発達してきました。
ただし、
高い場所で育ったから、自動的においしくなる
という意味ではありません。
標高は、そのコーヒーが育った条件を知るための一つの情報です。
品種、気候、土壌、栽培、収穫、精製など、コーヒーに影響する条件はほかにもあります。
コロンビアの「Supremo」も大きさが関係する
コロンビアでは、
Supremo
Excelso
といった名称を見ることがあります。
これらも、生豆の大きさによる選別と関係する表示です。
Supremoと書いてあるから、その農園で最もおいしかったコーヒーという意味ではありません。
一定の大きさに選別された生豆であることを示す情報として見る必要があります。
ここでも、
「Supremo=高得点」
とは限りません。
豆の大きさと、カップでどのような味がするかは、同じ評価ではないからです。
ブラジルでは、一つの言葉だけでは終わらない
ブラジルの生豆では、さらに複数の情報が並ぶことがあります。
欠点豆などを基準にした分類。
スクリーンサイズ。
カップの特徴。
精製方法。
こうした情報が組み合わされて、その生豆がどのようなものなのかを表します。
そのため、ブラジルの生豆の商品情報を見ると、数字や記号、聞き慣れない言葉がずらりと並んでいることがあります。
初めて見ると暗号のようですが、それぞれが別の情報を伝えています。
一つの数字だけですべてを評価しているわけではありません。
インドネシアにも「Grade 1」がある
インドネシアのコーヒーでも、
Grade 1
などの表示を見ることがあります。
ここでも欠点豆など、生豆の物理的な状態が分類に使われます。
すると、
「エチオピアにもG1があって、インドネシアにもGrade 1があるなら同じ?」
と思うかもしれません。
これも同じとは限りません。
同じ「Grade 1」という名前を使っていても、国が違えば分類方法や基準も違います。
Grade 1という言葉だけを取り出して、世界共通の「1等賞」と考えることはできないのです。
同じような記号でも、意味は違う
ここまでを見ると、コーヒーの等級にはいろいろな物差しがあることが分かります。
豆の大きさを見る。
欠点を見る。
標高を見る。
カップを見る。
複数の条件を組み合わせる。
そして、それぞれの国や地域が、自分たちの方法でコーヒーを分類しています。
そのため、
ケニアAA
エチオピアG1
グアテマラSHB
コロンビアSupremo
を一列に並べて、世界共通のランキングを作ることはできません。
そもそも、見ているものが違うからです。
等級とカッピングスコアも別のもの
ここでもう一つ区別しておきたいものがあります。
前の記事で見てきた「カッピングスコア」です。
たとえば、
「ケニア AA 87点」
という生豆があったとします。
この場合、
AAは主に生豆の大きさなどによる分類。
87点は、そのコーヒーをカッピングして評価した結果。
それぞれ違う情報です。
同じように、G1だから必ず何点以上、SHBだから必ず高得点、というように単純に置き換えることはできません。
等級とカッピングスコアは、同じコーヒーについて違うところを見ているのです。
では、等級は品質を表していない?
ここまで読むと、
「それなら等級は、あまり意味がないのでは?」
と思うかもしれません。
そういうわけでもありません。
生豆を大量に生産し、選別し、売買するためには、
どのくらいの大きさなのか。
どの程度欠点が含まれているのか。
どのような条件で生産されたものなのか。
といった情報が必要です。
等級は、コーヒーを分類し、取引するために作られ、使われてきた仕組みです。
ただし、その記号だけでコーヒーのすべてが分かるわけではありません。
大切なのは、
「何等級なのか」だけではなく、「何を基準にした等級なのか」を見ることです。
AAだから良い。
G1だから良い。
SHBだから良い。
というところで止まらず、
「このAAは何を表しているんだろう?」
と一つ先を見る。
すると、商品名に書かれている記号から分かることと、分からないことが少しずつ見えてきます。
そして、もう一つ疑問が残ります。
なぜ世界中で同じ基準を使わず、国や地域によってこれほど違う分類方法が作られたのでしょうか。
豆の大きさを重視した国。
欠点を重視した国。
標高を使った地域。
複数の情報を組み合わせてきた国。
この違いは、単に制度がバラバラだから生まれたわけではありません。
それぞれの国でコーヒーがどのように作られ、選別され、輸出され、取引されてきたのかとも関係しています。
次の記事では、
「なぜコーヒー豆の等級は、国によって違うの?」
を考えてみます。