では1本目から本文にします。ここでは健康への影響にはまだ踏み込まず、「どのくらい入っている?」という一見単純な質問が、実は何を基準に比べるかで変わるところまで扱います。
コーヒーには、カフェインがどのくらい入っている?
コーヒーといえば、カフェイン。
「コーヒー1杯には、カフェインが何mg入っていますか?」
よくある質問です。
調べてみると、
「1杯あたり約○mg」
といった数字がすぐに見つかります。
でも、ここで少し気になることがあります。
その「1杯」とは、どんなコーヒーなのでしょう。
100mLでしょうか。
150mLでしょうか。
大きなマグカップでしょうか。
使ったコーヒー豆は10gでしょうか、20gでしょうか。
ドリップでしょうか、エスプレッソでしょうか。
同じ「コーヒー1杯」でも、条件はかなり違います。
カフェイン量を考えるときには、まずここから見ていく必要があります。
そもそもカフェインとは?
カフェインは、コーヒーに含まれている成分の一つです。
コーヒーだけに含まれているわけではありません。
お茶やカカオなど、ほかの植物にも含まれています。
コーヒーノキにとってのカフェインは、人を眠らせないために作られているわけではありません。当然ですが、コーヒーノキは人間の朝の会議について特に関心がありません。
植物自身の生存や繁殖に関係する物質として存在しています。
私たちは、そのカフェインを含んだ種子を焙煎し、挽き、お湯で抽出して飲んでいます。
「コーヒー1杯○mg」は目安
では、実際にはどのくらい入っているのでしょう。
一般的な抽出コーヒーでは、100mLあたり数十mg程度のカフェインが含まれることがあります。
そのため、150mL程度のコーヒーなら数十mgから100mg前後といった数字が目安として示されることがあります。
ただし、これはすべてのコーヒーに共通する固定値ではありません。
同じ150mLでも、カフェイン量は変わります。
なぜでしょう。
まず、使ったコーヒー豆が違う
一つは、コーヒーそのものの違いです。
コーヒーにはさまざまな種や品種があります。
世界で広く飲まれているものでは、アラビカ種とカネフォラ種があります。
カネフォラ種の代表的な系統として、一般にロブスタと呼ばれるコーヒーがあります。
これらは、もともと含まれているカフェインの量が同じではありません。
一般に、カネフォラ種はアラビカ種よりも多くのカフェインを含みます。
つまり、
同じ量のコーヒー豆を使えば、必ず同じ量のカフェインになるわけではありません。
豆の段階ですでに違いがあるのです。
何g使ったかでも変わる
同じ豆でも、使う量が違えば当然カフェイン量は変わります。
10gのコーヒーを使った場合と、20g使った場合。
条件が同じなら、抽出に使えるカフェインの量も違います。
ところが「1杯」という言葉では、この違いが見えません。
Aさんの1杯は10g。
Bさんの1杯は15g。
Cさんは大きなマグカップに20g。
それでも全部、
「コーヒー1杯」
と呼べます。
だから「1杯あたり」という数字だけを見るときには注意が必要です。
カップの大きさでも変わる
次に、飲む量です。
100mLと300mLでは、同じ濃度のコーヒーでも飲むカフェインの総量は違います。
ここでは、
濃度と総量
を分けて考えると分かりやすくなります。
たとえば、ある飲み物に100mLあたり40mgのカフェインが含まれていたとします。
100mL飲めば40mg。
200mLなら80mg。
300mLなら120mgです。
濃さは同じでも、たくさん飲めば摂取する総量は増えます。
当たり前の話なのですが、「1杯」という単位になると、この当たり前が見えにくくなります。
「濃いコーヒー=カフェインが多い」とも限らない
ここでもう一つ、混同しやすいものがあります。
コーヒーの「濃さ」です。
濃い味のコーヒーを飲むと、
「カフェインも多そう」
と感じるかもしれません。
しかし、私たちが感じるコーヒーの濃さは、カフェインだけで決まっているわけではありません。
コーヒーから抽出されるさまざまな成分や、その濃度、香りや苦味なども関係します。
そのため、
味が濃いことと、カフェインが多いことは同じ意味ではありません。
ここはエスプレッソを考えると分かりやすくなります。
エスプレッソはカフェインが多い?
エスプレッソは、とても濃いコーヒーです。
そのため、
「普通のドリップコーヒーより、カフェインがずっと多い」
と思われることがあります。
ここでも、何を比べるかで答えが変わります。
同じ100mLで比較すれば、エスプレッソはカフェイン濃度が高くなることがあります。
しかし、エスプレッソは一度に飲む量が少ない。
一方、ドリップコーヒーはエスプレッソより薄くても、150mL、200mL、あるいはそれ以上飲むことがあります。
すると、
100mLあたりではエスプレッソの方が多くても、1回に飲むカフェインの総量ではドリップコーヒーの方が多くなる
ことがあります。
「どちらにカフェインが多い?」
という質問だけでは、実は条件が足りないのです。
淹れ方でも変わる
カフェインは、抽出するとコーヒー豆から飲み物の中へ移ってきます。
そのため、抽出条件によっても飲み物に含まれる量は変わります。
使う粉の量。
お湯の量。
抽出時間。
挽き方。
抽出方法。
こうした条件が関係します。
ただし、
「長く抽出すれば必ず○倍になる」
「細かく挽けば必ず○mg増える」
というほど単純でもありません。
もともと豆に含まれている量には限りがありますし、複数の条件が同時に関係しているからです。
抽出方法による違いは、別の記事でもう少し詳しく見ていきます。
焙煎度ではどうなる?
「浅煎りと深煎りでは、どちらの方がカフェインが多いの?」
これもよくある疑問です。
そして、少々ややこしい質問です。
焙煎すると豆は水分などを失い、重量が減ります。
体積も変わります。
カフェイン自体が焙煎によってどう変化するかという問題もあります。
そのため、
生豆の同じ重量から比較するのか。
焙煎後の豆を同じ重量で比較するのか。
同じ体積で量るのか。
同じ杯数を淹れるのか。
によって、見える結果が変わります。
「浅煎りの方が多い」
あるいは、
「深煎りの方が多い」
という一言だけでは、この違いを説明できません。
これも別の記事で詳しく考えてみます。
数字を見るときは、単位も見る
ここまで来ると、
「結局、何mgなの?」
と思うかもしれません。
もちろん、カフェイン量を示す数字には意味があります。
ただ、その数字を見るときには、
何に対する数字なのか
も一緒に見る必要があります。
100mLあたりなのか。
1杯あたりなのか。
豆1gあたりなのか。
乾燥重量に対する割合なのか。
同じ「カフェイン量」という言葉でも、これらは違う数字です。
たとえば、
「Aは40mg、Bは80mg」
とだけ書かれていたら、Bの方が多く見えます。
でも、
Aが100mLあたり40mg。
Bが300mLあたり80mg。
だったら、話は少し変わります。
数字だけでなく、数字が何を基準にしているのかを見る必要があります。
「1杯」は便利だけれど、曖昧
日常生活では、「コーヒー1杯」という表現で十分です。
毎朝、
「本日はアラビカ種焙煎豆15.2gを使用した抽出液180mLを摂取します」
などと言う必要はありません。
そんな朝は嫌です。
でも、カフェインの量を比較するときには、「1杯」の中身を少しだけ詳しく見る必要があります。
同じ1杯でも、
使った豆。
豆の量。
抽出方法。
抽出量。
飲んだ量。
が違うからです。
カフェイン量は、一つの数字では決まらない
「コーヒーにはカフェインがどのくらい入っていますか?」
この質問に、おおよその目安を答えることはできます。
でも、その数字はすべてのコーヒーに固定された値ではありません。
コーヒーそのものに含まれる量が違う。
使う豆の量が違う。
淹れ方が違う。
出来上がる量が違う。
そして、実際に飲む量も違う。
だから、カフェインについて数字を見るときには、
「何mg?」だけでなく、「何に対して何mg?」
まで見る。
それだけで、数字から分かることはかなり増えます。
そして逆に、その数字だけでは分からないことも見えてきます。