浅煎りと深煎り、カフェインが多いのはどっち?

「浅煎りと深煎りでは、どちらの方がカフェインが多い?」

カフェインについて調べていると、よく出てくる疑問です。

そして答えも、

「浅煎りの方が多い」

「深煎りの方が多い」

と、両方見つかることがあります。

反対の答えが出てくるのですから、なかなか困ったものです。

でも、どちらかが必ず間違っているとは限りません。

この疑問を考えるには、最初に一つ決めなければならないことがあります。

何を同じにして比べるのでしょうか。

焙煎すると豆は変わる

生豆を焙煎すると、コーヒー豆にはさまざまな変化が起こります。

水分が減り、重量が減少します。

豆は膨らみ、体積は大きくなります。

色も変わり、香りや味に関係する成分にもさまざまな変化が起こります。

つまり、同じ生豆から作った浅煎りと深煎りでも、焙煎後の豆は同じ状態ではありません。

ここがカフェインを比較するときの最初のポイントです。

カフェインは焙煎すると全部なくなる?

深煎りは浅煎りより長く、あるいはより高い温度まで焙煎されます。

すると、

「カフェインも熱でどんどん壊れて、深煎りではかなり少なくなるのでは?」

と思うかもしれません。

カフェインは焙煎中にまったく変化しないわけではありません。

ただし、一般的なコーヒーの焙煎で、ほかの多くの成分と同じように大量に失われてしまう、と単純に考えることもできません。

ここで大きく影響するのが、焙煎によって豆そのものの重量や体積も変わっていることです。

カフェインだけを見ていると、この変化を見落とします。

同じ生豆から比べてみる

考えやすくするために、同じ生豆から浅煎りと深煎りを作ったとします。

焙煎が進むほど、水分やそのほかの成分が失われ、豆の重量は減っていきます。

たとえば同じ100gの生豆から焙煎を始めても、浅煎りと深煎りでは、出来上がった焙煎豆の重量は同じになりません。

深く焙煎した方が、一般に重量減少は大きくなります。

すると面白いことが起こります。

焙煎中にカフェインが多少変化していたとしても、それと同時に豆全体の重量も減っています。

そのため、

「焙煎前にあったカフェインの総量」

と、

「焙煎後の豆1gあたりに含まれるカフェイン」

は、別の話になります。

「割合」と「総量」は違う

ここは少しだけ算数です。

仮に、あるものが100gあって、その中に1gの成分が含まれていたとします。

成分の割合は1%です。

そこから別の成分が失われて、全体が80gになったとします。

目的の成分がほとんど残っていれば、

1g ÷ 80g

なので、割合は1.25%になります。

目的の成分が増えたわけではありません。

全体が減ったため、相対的な割合が高くなっただけです。

コーヒーの焙煎でも、「何%含まれているか」を考えるときには、この重量変化を無視できません。

だから、

「深煎りだからカフェインが減る」

だけでは話が終わらないのです。

では、同じ10gなら?

実際にコーヒーを淹れるときには、生豆の状態ではなく焙煎豆を量ります。

たとえば、

浅煎り10g。

深煎り10g。

これを比べるとします。

重量を同じにした比較です。

深煎りの豆は、浅煎りより焙煎による重量減少が進んでいます。

そのため、同じ10gでも、焙煎前にさかのぼって考えれば、その10gを作るために必要だった生豆の量は同じとは限りません。

つまり、

「同じ10gだから、焙煎前も同じ量のコーヒーだった」わけではありません。

このため、重量を基準にした比較では、単純に「浅煎りの方がカフェインが多い」とは言い切れなくなります。

スプーン一杯なら、また変わる

では、重さではなく体積で量ったらどうでしょう。

たとえば計量スプーン一杯。

浅煎りと深煎りを同じスプーンですくいます。

焙煎が進むと豆は膨らみ、密度も変わります。

そのため、同じ体積を取ったときの重量は同じとは限りません。

一般に深煎りの豆は、同じ体積なら浅煎りより軽くなる傾向があります。

つまり同じスプーン一杯でも、

浅煎りは重い。

深煎りは軽い。

ということが起こります。

使っている豆の重量が違えば、そこから抽出されるカフェイン量にも違いが生じます。

ここでは、

同じ重量で比べた結果と、同じ体積で比べた結果が一致するとは限りません。

「一杯」で比べると、さらに条件が増える

では、

「浅煎りのコーヒー一杯と、深煎りのコーヒー一杯」

ならどうでしょう。

今度は条件がさらに増えます。

何gの豆を使ったのか。

何mL抽出したのか。

どのくらいの細かさで挽いたのか。

どのような方法で抽出したのか。

抽出時間はどのくらいだったのか。

同じ豆、同じ焙煎度でも、これらが変わればカップに移るカフェイン量も変わります。

つまり「一杯」という単位だけでは、焙煎度による違いなのか、レシピによる違いなのか分からなくなります。

苦いから、カフェインが多い?

深煎りのコーヒーは、浅煎りより強い苦味を感じることがあります。

そこで、

「深煎りは苦いからカフェインが多い」

と思われることもあります。

カフェインには苦味があります。

しかし、コーヒーの苦味を作っているのはカフェインだけではありません。

焙煎によって生じるさまざまな成分も、苦味に関係しています。

そのため、

苦味の強さからカフェイン量を判断することはできません。

これは前の記事で触れた「濃いコーヒーほどカフェインが多いとは限らない」という話ともつながります。

味の強さとカフェイン量は、同じ物差しではないのです。

では、浅煎りと深煎り、どちらが多い?

ここまで来て、ようやく最初の質問に戻れます。

「浅煎りと深煎りでは、どちらの方がカフェインが多い?」

この質問には、

何を同じにして比較するのかを決めないと、一つの答えにはできません。

同じ生豆から焙煎したものの総量を比べるのか。

焙煎後の豆を同じ重量で比べるのか。

同じ体積で比べるのか。

それとも、実際に淹れた一杯に含まれる量を比べるのか。

比較する条件によって、数字の見え方が変わります。

だから、

「浅煎りはカフェインが多い」

「深煎りはカフェインが少ない」

という結論だけを覚えるより、

何と何を比べた結果なのかを見る方が大切です。

比較するときには、何を揃えたのかを見る

これはカフェインだけの話でもありません。

コーヒーでは、

「こちらの方が酸っぱい」

「こちらの方が抽出が早い」

「低い温度で淹れた」

「一杯分使った」

といった言葉をよく使います。

普段の会話なら、それでも十分通じます。

でも、何かと何かを比較しようとした瞬間、

「一杯って何mL?」

「早いって何秒?」

「低いって何℃?」

という基準が必要になります。

カフェインについても同じです。

数字そのものより先に、

何を基準にして比べた数字なのか。

そこを見ると、反対に見える二つの説明が、実は違う条件を比べていただけだった、ということもあります。

浅煎りと深煎りのカフェイン量も、その一つです。