同じコーヒー豆でも、淹れ方を変えるとカフェインの量は変わるのでしょうか。
たとえば、
細かく挽いた方が多い?
長く抽出した方が多い?
お湯の温度を高くすると増える?
エスプレッソとハンドドリップでは?
いろいろな疑問が出てきます。
結論からいえば、抽出条件によって、カップの中に取り出されるカフェインの量は変わります。
ただし、ここでも一つの条件だけを見て、
「こうすればカフェインが多くなる」
と決めるのは少し乱暴です。
カフェインは、コーヒー豆の中にあるものを、お湯を使って取り出しているからです。
まずは、この「取り出す」というところから考えてみます。
豆にあるカフェインを、お湯の中へ移している
コーヒーを淹れると、粉の中にあるさまざまな成分がお湯の中へ移っていきます。
カフェインも、その一つです。
つまり、抽出によってカフェインが新しく作られるわけではありません。
もともとコーヒー豆に含まれていたカフェインの一部が、飲み物の中へ移ってきます。
そのため、まず大きく影響するのは、
どのくらいのコーヒー豆を使ったか
です。
10gの粉を使うのと、20g使うのとでは、最初にそこに存在するカフェインの量が違います。
抽出方法を比較するときに、ここを揃えないと話がややこしくなります。
お湯を増やしたら、カフェインも増える?
では、同じ量のコーヒー粉に対して、お湯を増やしたらどうでしょう。
100mLだけ抽出する。
200mL抽出する。
300mL抽出する。
抽出を続ければ、粉の中に残っているカフェインがさらに飲み物側へ移る可能性があります。
ただし、カフェインは無限に出てくるわけではありません。
もともと豆に含まれている量には限りがあります。
そのため、お湯を2倍にしたからといって、カフェイン量も必ず2倍になるわけではありません。
ここでも単純な比例ではないのです。
抽出時間が長いとどうなる?
カフェインが粉からお湯へ移るには、粉とお湯が接している必要があります。
そのため、抽出時間も関係します。
一般には、接触する時間が長くなれば、それだけ成分が移動する機会も増えます。
ただし、
「抽出時間が2倍なら、カフェインも2倍」
とはなりません。
抽出の初めと終わりでは、粉の中に残っている成分の状態も違います。
時間が経つほど、同じ速さで延々とカフェインが出続けるわけではないからです。
細かく挽くとどうなる?
豆を細かく挽くと、コーヒー粉とお湯が接触できる面積が大きくなります。
そのため、さまざまな成分を取り出しやすくなります。
カフェインについても、挽き目は抽出の進み方に関係します。
ただし実際の抽出では、挽き目を変えると別の条件まで変わることがあります。
たとえばハンドドリップなら、細かく挽くことでお湯の通過が遅くなることがあります。
すると、
挽き目が細かくなった。
接触面積が増えた。
抽出時間も長くなった。
という変化が同時に起こります。
結果だけを見て、
「細挽きにしたからカフェインが増えた」
とすると、どの変化がどの程度影響したのか分からなくなります。
コーヒーの実験で人間を困らせるのは、だいたいこういうところです。一つ動かしたつもりなのに、ほかまで勝手についてきます。
お湯の温度は?
温度も抽出に関係します。
一般に温度が変われば、コーヒーから成分が溶け出す速さや抽出の進み方も変わります。
そのため、カフェインの抽出にも温度は関係します。
ただ、
「低温ならカフェインがほとんど出ない」
と考えるのは違います。
水出しコーヒーにもカフェインは含まれています。
低い温度でも、長い時間コーヒーと水を接触させればカフェインは抽出されます。
ここでも、
温度だけではなく、時間などほかの条件と一緒に考える
必要があります。
水出しならカフェインが少ない?
「水出しコーヒーはカフェインが少ない」
という説明を見かけることがあります。
これも条件を確認した方がいいでしょう。
水出しは低い温度で抽出します。
一方で、数時間から十数時間という長い時間をかけて抽出する方法もあります。
さらに、レシピによって使用するコーヒー粉の量も違います。
つまり、
低温だから少ない。
長時間だから多い。
と、一つの条件だけで決めることはできません。
最終的には、
どんな豆を何g使い、
どのくらいの水で、
何時間抽出し、
そのうち何mL飲んだのか。
そこまで含めて考える必要があります。
エスプレッソは短時間だから少ない?
エスプレッソは、抽出時間が比較的短い方法です。
それならカフェインも少ないのでしょうか。
ここでも、そう単純ではありません。
細かく挽いたコーヒーを使い、短時間で濃度の高い飲み物を作ります。
そのため、少量の液体の中に比較的高い濃度でカフェインが含まれることがあります。
ただし、一杯の液量は小さい。
一方、ドリップコーヒーは一杯150mLや200mL、それ以上になることもあります。
だから、
濃度で比較するのか、一杯あたりの総量で比較するのか
によって見え方が変わります。
これは前の記事でも出てきた話です。
「濃い」と「たくさん入っている」は、似ているようで同じではありません。
ペーパードリップならカフェインは減る?
ペーパーフィルターを使うと、コーヒーに含まれる油分や細かな粒子の一部がフィルターに残ります。
では、カフェインもフィルターで大きく取り除かれるのでしょうか。
カフェインは抽出液中に溶けているため、通常のペーパーフィルターがカフェイン除去フィルターとして働くわけではありません。
したがって、
「紙で濾したからカフェインレスに近くなる」
ということではありません。
ペーパー、金属フィルター、フレンチプレスなどで出来上がったコーヒーに違いはありますが、その違いをすべてカフェイン量の違いとして考えることはできません。
「抽出しやすい」と「最終的に多い」も少し違う
ここでもう一つ分けておきたいものがあります。
抽出される速さと、最終的にカップに入った量です。
ある条件では、カフェインが早く抽出されるかもしれません。
でも、別の条件ではゆっくりでも、長い時間抽出することで最終的な量が近づくことがあります。
逆に、非常に抽出しやすい条件でも、途中で抽出を止めれば、そこで終わります。
だから、
「この方法はカフェインが抽出されやすい」
と、
「この方法で作った一杯にはカフェインが多い」
は、完全に同じ意味ではありません。
「一杯」を作るレシピ全体を見る
ここまでをまとめると、カップに入るカフェイン量には、
使った豆にどれだけカフェインが含まれていたか。
粉を何g使ったか。
どのくらいの細かさに挽いたか。
水をどのくらい使ったか。
どのくらいの温度だったか。
どのくらい接触させたか。
どんな方法で抽出したか。
そして、出来上がったコーヒーをどのくらい飲んだか。
といった条件が関係します。
だから、
「どの淹れ方が一番カフェインが多い?」
という質問には、抽出器具の名前だけでは答えにくいのです。
ハンドドリップだから何mg。
フレンチプレスだから何mg。
水出しだから何mg。
と決まっているわけではありません。
器具の名前より、その器具を使ってどんなレシピで抽出したかを見る必要があります。
カフェインを減らしたければ、どうする?
ここまで読むと、
「では、カフェインを少なくしたいときは、低い温度で短時間抽出すればいいのでは?」
と思うかもしれません。
確かに抽出条件を変えれば、取り出されるカフェイン量にも影響します。
ただし、カフェインだけを選んで減らしているわけではありません。
抽出条件を変えれば、酸味、甘味、苦味、香り、濃度など、コーヒーとしての味にも影響します。
カフェインを減らすために抽出そのものを不十分にしてしまえば、飲みたい味からも離れてしまうかもしれません。
カフェイン摂取量を大きく減らしたいのであれば、
使うコーヒーの量。
飲む量。
飲む回数。
そしてデカフェを選ぶ。
といった方法も含めて考えた方が分かりやすくなります。
一つだけ変えたつもりでも
コーヒーの抽出では、一つの条件を変えると別の条件まで変わることがあります。
挽き目を変えたら、抽出時間が変わった。
粉量を増やしたら、お湯の流れが変わった。
湯量を増やしたら、抽出時間も長くなった。
温度を変えたら、味の感じ方まで変わった。
だから何かを比較するときには、
何を変えて、何を同じにしたのか
を見る必要があります。
「細挽きの方がカフェインが多かった」
という結果があったとしても、
本当に違ったのは挽き目だけだったのか。
抽出時間も変わっていなかったか。
使用量は同じだったか。
出来上がった液量は同じだったか。
そこを確認する。
すると、その数字から言えることの範囲が見えてきます。
淹れ方で変わる。でも、淹れ方だけでは決まらない
最初の質問に戻りましょう。
「淹れ方で、カフェインの量は変わる?」
変わります。
ただし、「ドリップ」「エスプレッソ」「水出し」といった抽出方法の名前だけで決まるわけではありません。
豆そのものに含まれている量があり、
その豆をどれだけ使い、
どのような条件で抽出し、
最終的にどれだけ飲んだのか。
その積み重ねによって、実際に摂取するカフェイン量が決まってきます。
だからカフェインについて考えるときも、
「この淹れ方だから多い」
で終わらず、
どんな条件で作られた一杯なのか
を見る。
同じ「一杯のコーヒー」という名前の中にも、かなり違うものが入っています。