カフェインに強い人、弱い人がいるのはなぜ?

同じコーヒーを飲んでも、反応は人によってかなり違います。

「夜に飲んでも普通に眠れる」

という人もいれば、

「午後に一杯飲んだだけで眠れなくなる」

という人もいます。

一杯で頭がすっきりする人もいれば、何杯飲んでもあまり変化を感じない人もいます。

こうした違いを、

「カフェインに強い」

「カフェインに弱い」

と表現することがあります。

でも、この「強い」「弱い」とは、いったい何が違うのでしょう。

「強い」には、いくつかの意味がある

まず、「カフェインに強い」という言葉を少し分けてみます。

たとえば、

飲んでも眠れる。

動悸を感じにくい。

覚醒感があまりない。

たくさん飲んでも気分が悪くならない。

毎日飲んでいるので、以前ほど作用を感じない。

これらは、同じように見えて別のことです。

カフェインが体からなくなる速さが違う場合もあれば、カフェインに対する体の反応そのものが違う場合もあります。

さらに、普段から飲んでいることで作用に慣れている場合もあります。

つまり、

「強い・弱い」という一つの言葉の中に、いくつもの違いが入っています。

カフェインを分解する速さが違う

体内に入ったカフェインは、主に肝臓で代謝されます。

その代謝に大きく関係している酵素の一つが、

CYP1A2(シップ・ワン・エー・ツー)

です。

この酵素の働きには個人差があります。

そのため、同じ100mgのカフェインを摂っても、比較的速く代謝する人もいれば、長く体内に残る人もいます。

前の記事で出てきた「半減期」が、人によって違う理由の一つです。

カフェインが長く残れば、夕方に飲んだコーヒーが夜まで影響する可能性も高くなります。

一方、比較的速く代謝される人では、同じ量でも影響が続く時間が違うことがあります。

遺伝的な違いもある

CYP1A2の働きには、遺伝的な違いも関係しています。

そのため、生まれつきカフェインの代謝速度に違いが生じることがあります。

ただし、

「この遺伝子ならコーヒーに強い」

「この遺伝子なら弱い」

と、それだけで人を二種類に分けられるわけではありません。

実際のカフェインへの反応には、代謝だけでなく、別の要因も関係しているからです。

ここでも、人間は「速いタイプ」「遅いタイプ」と二つの箱に入れたくなりますが、現実はもう少し連続的です。

カフェインを感じる側にも違いがある

前の記事で、カフェインは主にアデノシン受容体の働きを妨げることで覚醒作用を示す、と説明しました。

このアデノシン受容体に関係する遺伝的な違いも、カフェインへの反応や睡眠への影響の個人差に関係すると考えられています。

つまり、

体からカフェインがなくなる速さ

だけでなく、

カフェインがあるときに、体がどう反応するか

にも違いがあります。

同じ量のカフェインが同じくらい体内に残っていても、本人が感じる作用まで同じとは限らないのです。

毎日飲んでいると「強くなる」?

普段からコーヒーを飲んでいる人は、

「毎日飲んでいるから、カフェインには強い」

と言うことがあります。

ここでは「耐性」が関係している可能性があります。

カフェインを繰り返し摂取していると、一部の作用を以前ほど強く感じなくなることがあります。

最初は一杯でかなり覚醒感があったのに、毎日飲んでいるうちに、それほど感じなくなる。

すると、

「カフェインに強くなった」

と感じます。

ただし、これは必ずしもカフェインをものすごい速さで分解できるようになった、という意味ではありません。

同じカフェインに対する反応が変化した

という側面があります。

「感じない」と「作用していない」は違う

ここは注意したいところです。

毎日コーヒーを飲んでいて、

「もう全然効かない」

と感じていても、カフェインが体内に入っていないわけではありません。

また、自覚できる覚醒感が弱いからといって、睡眠などへの影響も完全にないとは限りません。

反対に、

「ものすごく効いた気がする」

という感覚だけで、体内のカフェイン濃度がほかの人より高いとも言えません。

本人が感じる強さと、体内に存在するカフェイン量は別の情報です。

年齢や体の状態でも変わる

カフェインへの反応は、生まれつきの違いだけで決まるわけでもありません。

年齢や体の状態によっても変化します。

特に妊娠中はカフェインの代謝が遅くなることが知られています。

また、肝臓の状態や服用している薬などによって、カフェインの代謝が影響を受ける場合もあります。

つまり、

「昔から夜にコーヒーを飲んでも平気だから、これからもずっと同じ」

とは限りません。

同じ人でも条件は変化します。

喫煙でも変わる

少し意外なのが、喫煙との関係です。

喫煙はカフェインの代謝に関係する酵素の働きに影響するため、喫煙習慣がある人ではカフェインの代謝が速くなることがあります。

そのため、喫煙していた人が禁煙すると、それまでと同じ量のコーヒーを飲んでいても、カフェインの影響を以前より強く感じる場合があります。

コーヒーを変えていないのに、体側の条件が変わったわけです。

これも、

同じ一杯が、いつでも同じように作用するとは限らない

例です。

「私は夜でも飲める」は大切な情報

ここまで個人差の話をすると、

「結局、自分がどう感じるかなんて当てにならないの?」

と思うかもしれません。

そんなことはありません。

自分自身の経験は大切な情報です。

たとえば、

14時なら問題ない。

17時だと寝つきが少し悪い。

夕食後に飲むと夜中に目が覚めやすい。

デカフェなら気にならない。

こうしたことを何度か観察すれば、自分なりの傾向が見えてきます。

一般的な研究結果は基準になります。

でも、平均的な人間が夜に眠るわけではありません。

眠るのは自分です。

ただし、一回だけでは分からない

自分の経験を見るときにも注意があります。

昨日17時にコーヒーを飲んで眠れなかった。

だから17時以降のカフェインが原因だ。

とは、まだ言い切れません。

その日は昼寝をしたかもしれません。

仕事で強いストレスがあったかもしれません。

いつもより遅くまで明るい画面を見ていたかもしれません。

逆に、夜にコーヒーを飲んだのにぐっすり眠れた日が一日あったからといって、

「自分にはカフェインが効かない」

とも言い切れません。

一回の経験では、ほかの条件と区別しにくいからです。

何度か同じような条件で観察すると、少しずつ自分の傾向が見えてきます。

強い・弱いより、何が違うのか

「私はカフェインに強い」

という表現は、日常会話ならそれで十分です。

でも、もう少し詳しく考えるなら、

カフェインを代謝するのが速いのか。

作用を感じにくいのか。

普段から飲んでいて耐性があるのか。

睡眠への影響が少ないのか。

不快な症状が出にくいのか。

に分けてみる。

すると「強い」という一つのラベルだけでは見えなかった違いが見えてきます。

同じ100mgでも、同じ結果にはならない

カフェインについてここまで見てくると、一つの流れが見えてきます。

まず、コーヒーによってカフェイン含有量が違います。

淹れ方によって、カップに取り出される量も変わります。

飲む量によって、摂取量が変わります。

さらに体内に入ってからも、

吸収。

代謝。

感受性。

習慣。

そのときの体の状態。

などによって結果が変わります。

だから、

「100mg摂った」という数字が同じでも、全員に同じことが起こるわけではありません。

数字が間違っているのではありません。

100mgは100mgです。

ただ、その数字が説明しているのは「摂取した量」であって、

その人にどの程度作用するかまでを表した数字ではない

ということです。

カフェインに強いか、弱いか。

一つのラベルにしてしまえば簡単です。

でも、その中身を少し分けてみると、なぜ人によってコーヒーとの付き合い方が違うのかが見えてきます。