同じ目盛りなら、同じ挽き目になる?

コーヒーを淹れていて、

「今日はグラインダーの5番」

「昨日より一目盛り細かくした」

と記録することがあります。

目盛りがあれば、挽き目を数字で残せます。

言葉だけで「中挽き」と記録するより、ずっと正確そうです。

では、

同じ目盛りにすれば、同じ挽き目を再現できるのでしょうか。

同じグラインダーなら、かなり役に立ちます。

でも、

「同じ設定にした」ことと、「同じ粉ができた」ことは別です。

ここを分けて考えてみます。

目盛りは、何を表している?

グラインダーの目盛りは、基本的にはグラインダーの粉砕条件を調整するためのものです。

細かい側へ動かす。

粗い側へ動かす。

すると刃の位置関係などが変わり、出来上がる粉の状態も変わります。

だから、

「昨日5だったから、今日も5にする」

という使い方には意味があります。

少なくとも、

同じ機械を、同じ設定位置へ戻す

ための目印になります。

ここで注意したいのは、目盛りそのものが粒の大きさを測っているわけではないことです。

「5」と書いてあるから、

500μm。

5mm。

ある決まった粒径。

という意味ではありません。

多くの場合、それはその機械の中で使われる設定値です。

別のグラインダーの「5」は、別の数字

グラインダーAを5にする。

グラインダーBも5にする。

数字は同じです。

でも、同じ挽き目になるとは限りません。

そもそも目盛りの付け方が共通ではないからです。

ある機種では1から10。

別の機種では1から40。

無段階で数字がほとんど意味を持たないものもあります。

さらに、同じメーカーでも機種が違えば構造が違います。

つまり、

グラインダーの目盛りは、世界共通の物差しではありません。

「5」という数字だけを別の機械へ持っていっても、「5の意味」までは持っていけません。

では、同じ機種なら同じ?

ここから少し面白くなります。

同じメーカー。

同じ機種。

同じ目盛り。

ここまでそろえれば、かなり近づきそうです。

ただ、それでも必ず同じ粉になるとは限りません。

たとえば個体ごとの調整状態が違うことがあります。

ゼロ点の位置が違うこともあります。

刃の取り付け状態や摩耗状態も、まったく同じとは限りません。

長く使ったグラインダーと新品でも条件は違います。

そのため、

同じ機種の同じ目盛りは、有力な情報ではあるけれど、それだけで粉の状態を保証するものではない

と考えた方がいいでしょう。

同じ一台なら、毎回同じ?

では、一台のグラインダーだけを使い続けます。

同じ豆。

同じ目盛り。

これなら毎回まったく同じ粉になるでしょうか。

ここでも、「まったく同じ」とまでは言えません。

グラインダーの状態は少しずつ変わります。

刃は使用によって変化します。

内部に残った粉の状態もあります。

機種によっては温度などの影響を受けることもあります。

そして粉砕される側のコーヒーも、完全に一定ではありません。

豆の種類。

焙煎度。

焙煎後の経過。

豆の硬さや脆さ。

こうした違いによっても、粉砕された結果が変わる可能性があります。

つまり目盛りを固定することは、

グラインダー側の条件の一つを固定している

のであって、粉砕に関係するすべての条件を固定しているわけではありません。

目盛りと刃の隙間も、同じものではない

では目盛りより一歩進めて、

「実際の刃の隙間が同じならどうだろう」

と考えてみます。

これも、前の記事で触れたように、

刃の隙間=出来上がる粒の大きさ

ではありません。

グラインダーは、隙間と同じ寸法に豆を切る定規ではありません。

豆は刃の間で割れたり、砕かれたりしながら細かくなります。

刃の形状。

直径。

溝の構造。

回転数。

豆が刃へ入る経路。

粉が排出されるまでの経路。

こうした条件も粉砕に関係します。

だから二つのグラインダーの刃間隔が同じだったとしても、

同じ粒度分布になるとは限りません。

「同じ挽き目」という言葉も、少し怪しい

ここで、

「そもそも同じ挽き目って、何が同じなのだろう」

という問題が出てきます。

目盛りが同じ。

刃間隔が同じ。

代表的な粒径が同じ。

粒度分布が似ている。

これらは、全部少しずつ違います。

たとえば二つの粉の代表粒径が同じだったとします。

それでも、

細かい粒がどのくらいあるか。

大きな粒がどのくらいあるか。

中心付近にどのくらい集まっているか。

といった分布まで同じとは限りません。

つまり、

「同じ」と言うには、何を同じとするのかを決める必要があります。

それなら目盛りを記録する意味はない?

そんなことはありません。

むしろ目盛りは、とても便利です。

同じグラインダーを使っているなら、

昨日5だった。

今日は4.5にした。

その結果、抽出時間が変わった。

味も変わった。

という記録ができます。

ここで必要なのは、

「4.5とは何μmなのか」

を必ず知ることではありません。

前回から何を変えたのかが分かること

に価値があります。

目盛りは絶対的な測定値ではなくても、比較のための基準として使えます。

店では、目盛りだけでは足りなくなることがある

一人で一台のグラインダーを使っているなら、それでもかなり運用できます。

ところが店では、

複数のスタッフが使う。

豆が変わる。

焙煎日が変わる。

気温や環境も変わる。

グラインダーの状態も変化する。

といったことが起こります。

そこで、

「この豆は5番」

だけをルールにすると、困ることがあります。

5番にしたのに、昨日より抽出が速い。

あるいは遅い。

味も違う。

ここで、

「基準は5だから、5のままにする」

と考えてしまうと、目盛りを守ることが目的になります。

本来の目的が、

狙った抽出結果を得ること

だったなら、見るべきものは目盛りだけではありません。

「設定値」と「結果」を分ける

ここは、かなり大切です。

グラインダーの目盛りは、

設定値です。

実際に出来上がった粉は、

その設定によって生じた結果です。

さらに、その粉を使ってコーヒーを淹れれば、

抽出時間。

抽出量。

濃度。

味。

など、さらに別の結果が出てきます。

流れとして見ると、

目盛りを設定する
↓
粉砕される
↓
ある粒度分布の粉ができる
↓
その粉で抽出する
↓
抽出結果が出る
↓
味として感じる

となります。

「目盛り5」と「この味」の間には、いくつもの段階があります。

再現したいのは、数字? それとも結果?

レシピを残すときには、

豆15g。

湯240g。

湯温92℃。

グラインダー5。

抽出時間2分40秒。

のように数字を並べることがあります。

これは再現するためにとても役立ちます。

ただし、これらの数字を全部合わせること自体が、本来の目的とは限りません。

たとえば同じ「5」で抽出時間が大きく変わったなら、何かが以前と違っています。

そこで5を守るのではなく、

なぜ変わったのかを見る。

必要なら挽き目を調整する。

結果を確認する。

その方が、本来再現したかったものへ近づける場合があります。

設定を再現することと、結果を再現することは同じではありません。

基準は、固定するためだけにあるわけではない

目盛り5を基準にする。

これは悪いことではありません。

基準があるから、

昨日と比べられます。

変化に気づけます。

調整した結果も確認できます。

むしろ基準がなければ、

「なんとなく今日は違う」

で終わってしまいます。

ただし、基準を決めたあとには、

その基準で目的を達成できているか

を見る必要があります。

同じ設定なのに結果が変わった。

それは失敗とは限りません。

何か別の条件が変わったことに気づく入口にもなります。

同じ目盛りなら、同じ挽き目になる?

同じグラインダーであれば、目盛りをそろえることは再現のための重要な手掛かりになります。

でも、

同じ目盛り=同じ粉

とまでは言えません。

別のグラインダーなら、同じ数字でも意味が違います。

同じ機種でも、個体や状態が違えば結果が違うことがあります。

同じ一台でも、豆や機械の状態が変われば粉砕結果が完全に同じとは限りません。

だから目盛りは、

粉そのものを表す絶対的な数字ではなく、粉砕条件を再現するための一つの基準

として見ると分かりやすくなります。

そして、ここからもう一段先へ進むと、

「では、実際に出来上がった粉はどんな状態なのか」

という話になります。