お湯の量を変えると、何が変わる?

コーヒーのレシピには、

「コーヒー15gに、お湯250g」

「1:16で抽出する」

といった数字が書かれています。

お湯の量を増やせば薄くなる。

減らせば濃くなる。

まずはそう考えることができます。

でも、抽出に使うお湯には、

出来上がったコーヒーを薄める

だけではなく、

コーヒーから成分を取り出す

という役割もあります。

だから、お湯の量を変えると、

濃度だけではなく、抽出そのものも変わる可能性があります。

「使ったお湯」と「出来上がったコーヒー」は違う

まず、二つを分けておきます。

コーヒー15gに250gのお湯を注いだとします。

だからといって、250gのコーヒーが出来上がるわけではありません。

抽出後の粉には水が残ります。

フィルターや器具にも液体が残ることがあります。

そのため、

注いだ湯量と、出来上がった飲料量は違います。

当たり前のようですが、濃度や抽出率を考えるときには重要です。

粉にも水が残っている

抽出後のコーヒー粉を触れば、水を含んでいることが分かります。

つまり、注いだ水のすべてがカップへ移動したわけではありません。

たとえば250g注いで、出来上がった飲料が220gだったとします。

残りの30gがすべて粉だけに保持されている、と単純には言えませんが、

少なくとも、

250g入れた水のすべてを飲んでいるわけではない

ことは分かります。

だからレシピを見るときには、

注湯量なのか。

出来上がり量なのか。

を区別する必要があります。

「1:16」も、何の比率?

「コーヒーと水は1:16」

という表現もよく使われます。

コーヒー15gなら、

15 × 16 = 240g。

分かりやすい基準です。

ただし、この16が、

注ぐ水の量なのか。

出来上がる飲料の量なのか。

によって意味が変わります。

一般的なレシピでは注湯量との比率として示されることが多いですが、数字を見るときには、

何と何を比べた比率なのか

を確認した方が確実です。

比率になった途端に意味まで自動で統一される、という便利な制度は残念ながらありません。

お湯を増やすと、薄くなる?

たとえば、同じ15gのコーヒーで、

200gのお湯。

250gのお湯。

300gのお湯。

を使ったとします。

出来上がる飲料量が増えれば、濃度が低くなる方向へ働くことがあります。

だから、

「お湯を増やすと薄くなる」

という説明には意味があります。

ただし、ここで終わると一つ抜けています。

増やしたお湯も、コーヒーと接触する

からです。

新しく入った水も、抽出に参加する

前の記事で、水側も抽出中に変化すると考えました。

コーヒーへ触れる前の水。

コーヒー由来の成分を含んだ水。

この二つは同じ状態ではありません。

ドリップでは、新しい湯が上から加わります。

その湯は粉の層へ入り、コーヒーと接触し、下から抽出液として出ていきます。

つまり、お湯を増やすということは、

単に完成した飲料へ水を足すこととは違います。

抽出に参加する新しい水を増やしている

のです。

抽出前に増やすのと、抽出後に増やすのは違う

ここを比べると分かりやすくなります。

15gのコーヒーを200gのお湯で抽出して、最後に50gの水を加える。

もう一方は、

最初から250gのお湯をコーヒーへ通す。

最終的な飲料量を近づけることはできます。

でも、この二つでは、

250gの水すべてがコーヒーと接触したかどうか

が違います。

後から加えた50gは、抽出には参加していません。

一方、抽出に使った50gは、粉と接触しています。

だから最終的な濃度が近くなったとしても、抽出率や味まで同じになるとは限りません。

バイパスという考え方

抽出したコーヒーへ後から水を加えて濃度を調整する方法があります。

こうした方法は、バイパスなどと呼ばれます。

この方法のおもしろいところは、

抽出するために使う水と、飲料の濃度を調整する水を分けられる

ことです。

すべての水を粉へ通す。

一部だけを抽出に使い、残りを後から加える。

同じ総水量でも、抽出への関わり方が違います。

ここから、

「水量」という一つの数字にも、役割の違う水がある

ことが分かります。

お湯を増やすと、抽出率も上がる?

ほかの条件が近ければ、より多くの水をコーヒーと接触させることで、より多くの成分を取り出す方向へ進むことがあります。

ただし、

湯量を増やせば、抽出率がそのまま比例して上がる

わけではありません。

抽出が進むにつれてコーヒー側の状態も変わります。

水側の状態も変わります。

さらにドリップなら、

流れ。

接触時間。

粉の層の状態。

温度。

なども関係します。

100g増やしたら抽出率が何%増える、という単純な関係ではありません。

同じ湯量でも、使い方が違えば変わる

250gのお湯を使うとします。

一度に近い形で注ぐ。

何回かに分けて注ぐ。

少量ずつ注ぎ続ける。

途中で長く待つ。

どれも総湯量は250gです。

でも、

粉の層の水位。

新しい湯が入るタイミング。

水の流れ。

攪拌。

温度。

接触の状態。

が同じとは限りません。

つまり、

総湯量が同じことと、水が同じように抽出へ使われたことは別です。

粉と水の比率は便利

それでも、粉と水の比率を決めることには大きな意味があります。

毎回、

15gに240g。

という基準を作れば、比較しやすくなります。

昨日より薄い。

抽出時間が違う。

挽き目を変えたらどうなった。

という話をするときに、水量まで毎回違っていたら原因を追いにくくなります。

比率は、

同じ条件へ戻るための基準

として使えます。

では、比率を守れば同じ濃さになる?

これも必ずしもそうではありません。

同じ15g。

同じ240g。

でも、

挽き目。

温度。

抽出時間。

注ぎ方。

抽出方法。

コーヒーそのもの。

が違えば、出来上がった飲料の濃度も変わる可能性があります。

だから、

粉と水の比率は、濃度そのものではありません。

濃度に関係する条件の一つです。

豆を増やすのと、水を減らすのは同じ?

濃くしたいとき、

豆を増やす。

水を減らす。

どちらでも粉と水の比率を変えられます。

たとえば、

15g : 240g

から、

20g : 240g

にする。

あるいは、

15g : 180g

にする。

どちらもコーヒーに対する水の割合は小さくなります。

でも、抽出中に起きることまで同じとは限りません。

粉量を増やせば、粉の層の厚さなどが変わることがあります。

水量を減らせば、コーヒーと接触する水の総量が変わります。

つまり、

同じ比率になったとしても、そこへ至る条件が違えば抽出も同じとは限りません。

比率は状態を整理するための情報であって、抽出過程を全部説明する数字ではありません。

水は、ずっと同じ水ではない

もう一度、水側から考えてみます。

抽出開始時には、コーヒー由来の成分を含んでいない水があります。

コーヒーと接触すると、成分を含むようになります。

さらにドリップでは、その液体の一部が下へ移動し、新しい水が上から入ってきます。

つまり粉の層の中では、

時間とともに、水の量だけでなく水の状態も変化しています。

「250gのお湯を使った」という数字は、最終的な総量を示しています。

でも、

その250gが、

いつ入ったのか。

どこを通ったのか。

そのとき粉側がどんな状態だったのか。

までは表していません。

水そのものの性質も同じとは限らない

さらに、「水250g」と言っても、水そのものがすべて同じとは限りません。

水にはさまざまな成分が含まれています。

ミネラルなどの組成が違えば、抽出や味に影響することがあります。

つまり本当は、

水量。

水温。

水の流れ。

そして、

水そのものの性質

も別々の条件です。

ただし、一度に全部考える必要はありません。

まず水量をそろえる。

必要になったら温度を見る。

さらに違いが説明できなければ、水の性質を見る。

ここでも、目的に応じて見る項目を増やせば十分です。

水については、それだけで一つの章が必要になります。

出来上がり量を見る方法もある

レシピを作るとき、

注湯量だけではなく、

実際に何gの飲料が出来上がったか

を見る方法もあります。

たとえば、

15gのコーヒー。

250g注湯。

出来上がり220g。

というように記録します。

すると、

どのくらい注いだか。

どのくらいカップへ出てきたか。

を分けて見ることができます。

抽出率を計算するときにも、この違いは重要でした。

「濃いから水を増やす」の中身

コーヒーを飲んで、

「濃すぎる」

と感じたとします。

そこで水を増やす。

これは有効な調整になることがあります。

でも、

抽出に使う水を増やすのか。

抽出後に水を加えるのか。

では意味が違います。

前者は、

濃度と抽出の両方へ影響する可能性があります。

後者は主に、

出来上がった飲料の濃度を調整します。

「水を増やす」という同じ言葉でも、操作が違えば変わるものも違います。

お湯の量を変えると、何が変わる?

お湯の量を増やせば、出来上がる飲料量が増え、濃度が下がる方向へ働くことがあります。

でも、それだけではありません。

その水を抽出に使えば、

コーヒーと接触する水の量が変わります。

抽出の進み方が変わります。

抽出率が変わる可能性があります。

水の流れや時間も変わることがあります。

つまり、

水は「薄めるもの」であると同時に、「抽出する側」でもあります。

だから、

「15gに250g」

という数字を見るときも、

単なる飲み物の配合としてではなく、

250gの水を、コーヒーとどう関わらせたのか

まで考えることができます。

注湯量。

出来上がり量。

抽出に使った水。

後から加えた水。

同じ「水の量」でも、それぞれ意味が違います。

数字を細かくすることより、

何を量っている数字なのかを分けること。

その方が、レシピを理解するには役立ちます。