コーヒーの焙煎を始めると、生豆の色は少しずつ変化していきます。
緑色だった豆は、白っぽい色を経て、やがて黄色っぽくなります。
この変化を、焙煎では「黄変」と呼ぶことがあります。
では、黄色くなった瞬間に、豆の中で何か一つの反応が始まったのでしょうか。
そう単純ではありません。
焙煎中の豆では、温度が上がるにつれて水分が移動し、蒸発し、さまざまな化学反応も進んでいきます。
黄変は、その連続した変化の中で、私たちが目で確認できる変化の一つです。
つまり、
「ここから突然、別の反応が始まった」という境界線というより、豆の状態が変化してきたことを観察するための目印
と考える方が分かりやすいでしょう。
色だけではありません。
この頃には香りも変化していきます。
焙煎の初めに感じていた青っぽさや湿った草のような香りから、乾いた草のような香りへ変わっていきます。
さらに焙煎が進むと、パンのような香りや甘さを感じさせる香りが現れてきます。
ただし、黄変を判断する位置は、いつでも完全に同じとは限りません。
豆全体が一瞬で緑から黄色へ変わるわけではないからです。
豆によって色の変わり方にはばらつきがあります。
照明や見る人によっても、「黄色くなった」と判断する位置は少し変わります。
そのため、黄変を記録するときには、自分の中である程度同じ基準を持って観察することが大切です。
そして、温度や時間と一緒に記録します。
前回は、どのくらいの時間で黄変したのか。
今回はどうだったのか。
そのときの香りや豆の状態はどうだったのか。
そうして比較すると、単なる「黄色になった時刻」以上の情報になります。
また、焙煎については「ドライフェーズ」「メイラードフェーズ」といった区分が使われることがあります。
黄変をその区切りとして扱うこともありますが、豆の内部で起きている現象が、その瞬間にきれいに切り替わるわけではありません。
フェーズは、連続して起きている変化を観察したり比較したりするために、人が区切ったものです。
黄変も同じです。
黄色になったこと自体が目的なのではなく、
そこまで豆がどう変化してきたのか。
そして、そのあとどう変化していくのか。
その流れを見るための一つの目印になります。