コーヒーについて調べていると、たくさんの数字が出てきます。
焙煎温度。
抽出時間。
生豆の含水率。
コーヒーの濃度。
数字で書かれていると、とてもはっきりした情報に見えます。
たとえば、
「200℃」
と書かれていれば、誰が測っても同じ200℃のように思えます。
しかし、数字を見るときには、
「何を、どこで、どう測った数字なのか」
まで確認する必要があります。
たとえば、焙煎中の温度です。
焙煎機には温度センサーが取り付けられています。
しかし、そのセンサーがどこにあるかは焙煎機によって違います。
センサーの太さや形、取り付け方も違います。
豆の量が変われば、センサーの周囲の状態も変わります。
同じ焙煎機でも、どの場所の温度を測っているかによって表示される数字の意味は変わります。
そのため、
「この焙煎機では200℃でこうなった」
という情報を、
別の焙煎機の200℃にそのまま当てはめることはできません。
同じ単位の数字でも、測定条件が違えば単純には比較できないのです。
生豆の含水率も同じです。
「含水率10%」
と数字だけを見ると、とても明確に見えます。
しかし、測定機器や測定方法、試料の状態などによって測定値には違いが生じることがあります。
だから、自分の測定値と誰かの測定値を比べるときには、
数字だけではなく、
どのように測ったのか
も重要になります。
抽出時間はもっと単純そうに見えます。
ストップウォッチで時間を測ればいいからです。
それでも、
いつから計り始めたのか。
いつを終了としたのか。
で数字は変わります。
お湯を注ぎ始めた瞬間からなのか。
蒸らしが終わってからなのか。
最後のお湯を注ぎ終わるまでなのか。
ドリッパーから液体が落ち終わるまでなのか。
同じ「3分」という記録でも、測り方が違えば意味は同じではありません。
コーヒーの濃度を測る場合にも、測定機器や測り方があります。
数字だけを書き残すより、
どのような条件で測った数字なのかが分かる方が、あとから比較しやすくなります。
では、測定条件が違う数字には意味がないのでしょうか。
そういうことではありません。
まず、自分の中で測り方をそろえれば比較できます。
同じ焙煎機。
同じセンサー。
同じ測定方法。
同じ時間の取り方。
条件をそろえて記録を続ければ、
「前回より高い」
「いつもより早い」
「このときとは違う」
と比較できます。
数字の強さは、絶対的な答えになることより、同じ基準で比較できることにあります。
これは測定器だけの話ではありません。
言葉にも似たところがあります。
ある人の「酸味が強い」と、別の人の「酸味が強い」が、まったく同じ強さを表しているとは限りません。
数字は言葉より客観的に扱いやすいものですが、
それでも、
測定された条件から切り離して数字だけを見ることはできません。
だから、数字を見るときには、
「いくつだった?」
だけではなく、
「何を測った?」
「どこで測った?」
「どうやって測った?」
と考えてみます。
そして、自分で記録するときには、できるだけ同じ方法で測ります。
そうすれば、数字は少しずつ比較できる情報として積み上がっていきます。
測る。
記録する。
比べる。
違いがあれば、その理由を考える。
必要なら測り方そのものも確認する。
数字を見る前に、その数字がどう作られたのかを見る。
それができると、数字に振り回されるのではなく、数字を判断のための道具として使えるようになります。