コーヒーを作っていると、
「いつもと違う」
ことがあります。
抽出時間が長い。
出来上がった量が少ない。
焙煎の進み方が早い。
1ハゼの時間がいつもと違う。
測っている数字が、決めていた範囲から外れている。
基準があると、こうした違いに気づくことができます。
では、基準から外れたら、すぐに元へ戻した方がよいのでしょうか。
まず確認したいのは、
「何が基準から外れたのか」
です。
数字が外れた。
操作が外れた。
味が外れた。
商品として求めている状態から外れた。
これらは同じではありません。
たとえば、抽出時間を3分前後と決めていたとします。
ある日は3分20秒かかりました。
時間だけを見れば、いつもの範囲から外れています。
しかし、飲んでみると狙っていた状態になっているかもしれません。
反対に、3分ちょうどだったのに、いつもとは違う味になっていることもあります。
基準から外れたことと、目的から外れたことは別です。
だから、基準から外れたら、
まず結果を確認します。
目的としている状態になっているのか。
商品として許容できる範囲なのか。
そこに問題があるのか。
そのうえで、修正するかどうかを考えます。
焙煎でも同じです。
いつもより1ハゼが早い。
RoRの動きも少し違う。
ここで、
「いつもの数字に戻さなければ」
とすぐ操作すると、目の前で起きている変化より、過去の基準を優先することになります。
もちろん、その違いから先の変化を予測して、早めに操作した方がよい場合もあります。
大切なのは、
「基準から外れたから操作する」のではなく、「このままでは目的から外れそうだから操作する」
という違いです。
基準からのズレは、その判断をするための情報になります。
では、基準から外れていても結果に問題がなければ、何もしなくてよいのでしょうか。
ここも少し考える必要があります。
今回は問題がなくても、そのズレが次の問題につながる兆候かもしれません。
ミルの状態が変わってきた。
焙煎機の状態がいつもと違う。
生豆の状態が変化している。
測定機器に違いが出ている。
作業方法が少しずつ変わっている。
一回の結果だけなら問題がなくても、
同じ方向へのズレが続いているなら、何かが変化している可能性があります。
つまり、
一回のズレと、続いているズレも分けて見る必要があります。
たとえば、
いつもより抽出時間が10秒長かった。
次の日は15秒長かった。
その次は20秒長かった。
一杯ずつは許容できる味だったとしても、
変化の方向が続いていることには意味があります。
「まだ問題ではないから放っておく」
だけではなく、
「何が少しずつ変わっているのだろう」
と見ることができます。
ここでは、
結果の大きさだけでなく、変化の方向を見る
ことも役に立ちます。
焙煎でも、
一回だけ1ハゼが早かったのか。
最近少しずつ早くなっているのか。
では意味が違います。
継続して記録していれば、その変化に気づきやすくなります。
では、どんなときに修正するのでしょうか。
一つは、
目的としている結果から外れているとき。
もう一つは、
このまま進むと目的から外れる可能性が高いと判断したとき。
そして、
結果にはまだ問題がなくても、継続的な変化が見えているとき。
ただし、三つ目は必ずすぐ修正するという意味ではありません。
原因を確認する。
記録を増やす。
次も同じ変化が起きるかを見る。
そうした対応もあります。
見つけた違いに対して、必ず操作で応える必要はありません。
観察を続けることも、一つの判断です。
これは意外と重要です。
何か違いを見つけると、人はすぐに直したくなります。
しかし、そこで操作すると、そのままなら何が起きたのか分からなくなることがあります。
安全や品質に問題がない範囲なら、
あえてそのまま観察して、結果を見ることで分かることもあります。
もちろん、商品として提供できない状態になると予想できるなら、観察のために失敗する必要はありません。
何を優先するかは、目的によって変わります。
実験として確認しているのか。
商品を製造しているのか。
店舗でお客様に提供しているのか。
同じズレでも、必要な対応は違います。
修正するかどうかも、目的によって決まります。
基準を見る。
ズレに気づく。
何がズレたのか確認する。
結果を見る。
そのままならどうなりそうか予測する。
修正するのか。
観察を続けるのか。
記録だけ残すのか。
そこで判断します。
基準から外れたことは、
「直せ」
という命令ではありません。
「いつもと違うことが起きている」
という情報です。
その情報を見て、目的に対して何をするのかを決める。
そこまで含めて、基準を使うということです。