焙煎の記録を見ると、「RoR」という数字が出てくることがあります。
RoRは「Rate of Rise」の略で、温度がどのくらいの速さで上昇しているかを見るためのものです。
たとえば、豆温が1分間に10℃上昇していれば、RoRはおおよそ10℃/分と表すことができます。
温度が「今どこにいるのか」を示す数字だとすると、
RoRは、
「今、どのくらいの速さで温度が変化しているのか」
を見る数字です。
たとえば、同じ180℃でも、
まだ速い速度で温度が上がっている180℃と、
ゆっくり温度が上がっている180℃では、
その後の進み方は同じではありません。
そのため、焙煎では温度だけでなく、その温度がどのように変化しているのかを見ることがあります。
RoRの計算方法にも違いがあります。
1分間の温度変化を見る方法もあれば、30秒間の変化から計算する方法もあります。
短い時間で計算すると変化を早く捉えやすくなりますが、細かな揺れも大きく見えやすくなります。
長い時間で計算すると動きは滑らかになりますが、急な変化は見えにくくなります。
さらに、RoRは温度の測定値から計算します。
そのため、温度センサーの位置や反応の速さ、記録する間隔などによっても、表示されるRoRは変わります。
つまり、
RoRも焙煎機や測定方法を越えて、そのまま比較できる絶対的な数字ではありません。
では、何のために見るのでしょうか。
たとえば、火力を変えたあとに温度上昇の速さがどう変わったのか。
排気を変えたときはどうだったのか。
黄変や1ハゼの前後で、温度上昇の速さがどう変化したのか。
そうしたことを記録していくと、
自分が行った操作と、そのあとに起きた変化
の関係を見るための手がかりになります。
ただし、RoRのグラフをきれいな形にすること自体が、焙煎の目的ではありません。
同じようなRoRの形になったとしても、生豆の状態や焙煎機、焙煎時間などが違えば、出来上がったコーヒーまで同じになるとは限りません。
最後に確認するのは、実際に出来上がったコーヒーです。
どんな味や香りになったのか。
それは目指していたものだったのか。
その結果と温度やRoRの記録を照らし合わせることで、次の焙煎に使える情報になります。
RoRは、守るべき形ではなく、焙煎中の変化を観察するための一つの道具です。