コーヒーには、数字で測れるものがたくさんあります。
生豆なら、
含水率。
水分活性。
密度。
焙煎なら、
温度。
時間。
RoR。
抽出なら、
粉の量。
お湯の量。
湯温。
抽出時間。
コーヒーの濃度や抽出率も測ることができます。
数字にすると、状態や変化を比較しやすくなります。
では、数字を詳しく測れば、そのコーヒーがおいしいかどうかまで分かるのでしょうか。
ここでは、
「測っているもの」と「知りたいこと」を分けて考える必要があります。
たとえば、焙煎中に温度を測ります。
温度計には200℃と表示されているかもしれません。
これは、温度センサーがその場所で捉えた状態を数字にしたものです。
「200℃だから、おいしい」
という意味ではありません。
RoRも同じです。
温度がどのくらいの速さで変化しているのかを見るためには役立ちます。
しかし、きれいなRoRのグラフになったことと、狙った味になったことは同じではありません。
抽出でも同じことが起こります。
コーヒーの濃度を測れば、液体の濃さについて比較できます。
抽出率を計算すれば、使ったコーヒーからどの程度の成分が飲料側へ移ったのかを見る手がかりになります。
しかし、
同じ数字なら、同じ味になるとは限りません。
数字では同じくらいの濃度でも、香りや酸味、苦味、口当たりなどの印象が違うことがあります。
数字は役に立たないのでしょうか。
もちろん、そういうことでもありません。
数字の大きな利点は、
感覚だけでは捉えにくい違いを、比較できる形で残せることです。
昨日の焙煎と今日の焙煎。
二つの抽出。
違う生豆。
「なんとなく違う」だけでなく、測った値を比べることができます。
たとえば、
「前回より抽出時間が長かった」
「同じ設定でも温度の変化が違った」
「生豆の含水率が前回と違う」
という情報があれば、味の違いを考えるための手がかりが増えます。
一方で、感覚にも役割があります。
香りをどう感じたのか。
酸味はどうだったのか。
甘さは感じられたのか。
口当たりはどうだったのか。
目的としていたコーヒーになったのか。
これは実際に飲んで確認する必要があります。
つまり、
数字と感覚は、どちらが正しいかを競うものではありません。
見ているものが違います。
数字だけを見ていると、
「この数値だから、この味になる」
と考えたくなることがあります。
反対に、感覚だけを見ていると、
「今日はなんとなく違う」
で終わってしまうことがあります。
そこで、二つをつなげます。
条件を記録する。
数字を見る。
実際に飲む。
感じたことを記録する。
前回と比べる。
すると、
「この数字のときは、この味になる」
とすぐに決めるのではなく、
「この条件とこの数字のとき、今回はこう感じた」
と見ることができます。
同じような結果が繰り返されれば、少しずつ関係が見えてくるかもしれません。
逆に、予想と違う結果が出ることもあります。
そのときは、
「数字が間違っている」
「自分の感覚が間違っている」
と、どちらかを捨てる必要はありません。
ほかに見ていない条件があるのかもしれません。
測り方が違ったのかもしれません。
そもそも、その数字と味の関係について考え直す必要があるのかもしれません。
数字は、答えそのものではなく、観察するための道具です。
そして感覚も、単なる気分として片づけるものではありません。
コーヒーを飲むのが人である以上、最終的にどう感じたのかは重要な結果の一つです。
測る。
飲む。
比べる。
違いを見る。
理由を考える。
もう一度確かめる。
数字が増えるほどコーヒーが分かるのではありません。
何を知るためにその数字を測っているのかが分かって、初めて数字を判断に使えるようになります。