コーヒーを飲んで、
「前より甘く感じる」
「この前の方が香りが強かった気がする」
と思うことがあります。
でも、その「前」はどんな味だったのでしょうか。
数日前なら覚えているかもしれません。
数週間、数か月たつと、細かな違いを思い出すのは難しくなります。
そこで役に立つのが、記録です。
味や香りを記録しておくと、
そのとき感じたことを、あとから比較することができます。
たとえば、焙煎した翌日に飲んだコーヒーについて、
「香ばしい香りが強い」
「酸味を強く感じる」
「余韻に少し苦味が残る」
と記録したとします。
5日後に同じコーヒーを飲んで、
「甘い香りを感じやすくなった」
「酸味の印象が変わった」
と記録する。
さらに10日後にも飲んでみる。
すると、
「このコーヒーは時間がたつと、こう変化した」
という経過を見ることができます。
もちろん、一度の記録だけで原因まで分かるわけではありません。
保存状態。
抽出条件。
飲んだときの温度。
自分の感じ方。
さまざまな条件が関係しているからです。
それでも記録があれば、
「なんとなく違った気がする」
だけで終わらず、何が変わったのかを確かめる手がかりになります。
記録は、焙煎を比べるときにも使えます。
同じ生豆を、条件を変えて焙煎する。
それぞれを同じような条件でカッピングする。
そして、
香り。
酸味。
甘味。
苦味。
口当たり。
余韻。
気づいた特徴を残しておきます。
すると、焙煎の記録とカップの記録を見比べることができます。
「この条件では、こう感じた」
「ここを変えたら、こう変わった」
という関係を考えるための材料になります。
抽出でも同じです。
挽き目を変えた。
お湯の温度を変えた。
粉とお湯の量を変えた。
そのとき何を感じたのかを記録します。
ここで重要なのは、
数字だけを残しても、結果までは分からない
ということです。
「湯温90℃」
「抽出時間2分30秒」
と記録しても、それだけではそのコーヒーをどう感じたのかは分かりません。
反対に、
「前よりおいしかった」
だけでも、何を変えた結果なのか分かりません。
条件と、感じた結果。
その両方を残すことで、あとから比較しやすくなります。
ただし、記録は細かければ細かいほど良いわけでもありません。
項目を増やしすぎると、記録すること自体が目的になってしまうことがあります。
最初は、
「何を変えたか」
「何を感じたか」
だけでも構いません。
必要になったら、項目を増やせばいいのです。
そして、記録にはもう一つ役割があります。
自分の判断そのものを、あとから見直せることです。
以前は「酸味が強い」と書いていたコーヒーを、しばらくしてから飲むと、それほど強く感じないかもしれません。
コーヒーが変化した可能性もあります。
抽出条件が違った可能性もあります。
そして、自分の感じ方や基準が変わった可能性もあります。
記録がなければ、
「今はこう感じる」
だけで終わります。
記録があれば、
「以前はこう感じていた」
と比べることができます。
記録は、正解を残すためのものではありません。
そのとき何を見て、何を感じ、どう判断したのかを残すものです。
だから、あとから判断が変わっても構いません。
むしろ、
「なぜ判断が変わったのだろう」
と考える材料になります。
観察する。
記録する。
比べる。
考える。
そして、次に試すことを決める。
記録を続けると、一杯ごとの感想だったものが、少しずつ次の判断に使える情報になっていきます。